2012 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛・鞭毛の機能的多様性とチューブリンポリグルタミル化の関連性に関する研究
Project/Area Number |
12J06986
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
紺野 在 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | チューブリン / 翻訳後修飾 / ポリグルタミン酸化 / TTLL9 / 質量顕微鏡 |
Research Abstract |
繊毛・鞭毛をはじめとする微小管性細胞骨格の機能的多様性と、チューブリンポリグルタミル化の関連性を調査するため、チューブリンポリグルタミン酸化酵素の1つであるTTLL9を欠損するマウスの解析を行った。TTLL9欠損マウスの様々な組織の病理解析の結果、精巣の精細管の内径が野生型の同腹仔と比較して有意に減少していることを発見した。そこで、精巣の凍結切片を作製し、ポリグルタミン酸側鎖を認識する抗体を用いた免疫染色を用いたTTLL9欠損マウスと野生型マウスの比較を行った。その結果、TTLL9欠損マウスの精巣では、精子尾部の鞭毛由来と考えられるポリグルタミン酸化チューブリンのシグナルの顕著な減少が観察された。ポリグルタミン酸化の減少が鞭毛形成に及ぼす影響をさらに詳細に調査するため、透過型電子顕微鏡による解析を行った。TTLL9欠損マウス精子には、細胞質の脱落不全、精子鞭毛の付属構造および鞭毛軸糸の形成不全が観察されたが、同様の像は野生型では観察されなかった。以上の結果はポリグルタミン酸化が精子形成に重要な役割を果たしており、その分子機構の研究は新たな男性不稔メカニズムの解明につながる可能性がある。 また、質量顕微鏡を用いて組織切片上で翻訳後修飾レベルを可視化するための条件検討を行った。ブタ脳から精製したチューブリンを、溶液中でトリプシン、AspN、subtilisinのいずれかで消化し、ITOスライドグラスにごく少量滴下した。乾燥後、マトリクスを噴霧しMALDI-TOF型の質量分析器での検出を試みた。その結果、いずれの消化酵素でもチューブリンペプチドが検出された。特にAspN消化したものについては、陰イオンモードでグルタミン酸化に由来する129Daごとに現れる複数のピークを検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスの解析に関しては、ポリグルタミン酸化酵素TTLL9遺伝子欠損マウスの表現型の異常を発見し、詳細な組織学的解析をほぼ完了したため。また質量顕微鏡による翻訳後修飾イメージングに関しては、組織のイメージングに不可欠な条件検討の1つを完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックアウトマウスの解析については、TTLL9欠損オスマウスの稔性および、精子運動の解析を行い、鞭毛機能への影響を調査する必要がある。また、ポリグルタミン酸化の時間的・空間的制御を明らかにするため、別のポリグルタミン酸化酵素TTLL1欠損マウスおよび、逆反応の脱グルタミン酸化酵素CCP1欠損マウスの精子形成との比較を行う予定である。質量顕微鏡によるチューブリン翻訳後修飾のイメージングについては、未消化のチューブリンをスライドグラスに塗布し、スライドグラス上での酵素消化条件を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)