2013 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛・鞭毛の機能的多様性とチューブリンポリグルタミル化の関連性に関する研究
Project/Area Number |
12J06986
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
紺野 在 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | チューブリン / 翻訳語修飾 / ポリグルタミン酸化 / TTLL9 / 精子 / 鞭毛 |
Research Abstract |
繊毛・鞭毛機能とチューブリンポリグルタミル化の関連性を調査するため、チューブリンポリグルタミン酸化酵素TTLL9を欠損するマウスの解析を行った。TTLL9欠損マウスでは精子形成の異常が見られたことから、交配実験を行いTTLL9欠損雄マウスは完全に生殖能力を失っていることが明らかになった。不稔の原因を解明するためTTLL9欠損マウス精巣上体尾部の精子数を計数したところ、野生型の1/4程度まで減少していたが、精子形態は正常に見えるものも多数含まれた。以上の観察から、TTLL9欠損マウスの雄性不稔には精子形成の異常による精子数の減少が関与していることが示唆されるが、それだけでは完全な不稔を説明することはできない。チューブリンのポリグルタミル化レベルの異常は、繊毛・鞭毛の運動性に影響することが過去に報告されている。TTLL9欠損マウスにおいても精子のポリグルタミン酸化型チューブリンの量に減少が見られたため、続いて精子運動解析を行った。高速度ビデオ撮影した精子の解析から、TTLL9欠損マウスでは運動性を有する精子の割合と精子の前進運動性が減少していた。精子鞭毛波形の解析では、TTLL9欠損マウス精子の鞭毛において、屈曲は可能だが頭部から尾部に向かう波の伝播に異常が見られた。これは鞭毛屈曲を駆動するモータータンパク質であるダイニンの活性は失われていないが、適切な活性のオンオフができなくなっていることを示唆する。興味深いことに、電子顕微鏡による鞭毛微細構造の観察から、TTLL9欠損精子鞭毛では、9本のダブレット微小管のうち、7番目のものが選択的に欠損する構造異常が高頻度で観察された。本研究は鞭毛特異的なポリグルタミン酸化の新規機能を明らかにし、哺乳類精子の鞭毛構築および鞭毛運動の機構、および鞭毛と繊毛の多様性に関する新しい知見を提供することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ポリグルタミン酸化酵素TTLL9欠損マウスの表現型が予想以上に興味深いものだったため、解析に時間をかけることでよりインパクトの高い研究になると判断した。そのため、諭文の完成は当初の予定より遅れているが, 表現型解析は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
TTLL9欠損マウスの解析については、遺伝子ノックアウトによるタンパク質レベルの変動を調査するため、抗体を作製中である。TTLL9特異的抗体を用いた解析および、鞭毛軸糸のポリグルタミン酸化チューブリンに関する免疫電子顕微鏡法を行い、それが終了した時点で論文の作成、投稿を行う。研究計画ではTTLL9欠損マウス精巣のチューブリンの質量分析イメージングを合わせて検討する予定であったが、TTLL9欠損マウスの表現型は単独での報告の方が論点が明確であると判断した。そのため表現型に関する報告を終了した後、質量分析イメージングの検討を行う。
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Research Products
(2 results)