2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J06997
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大林 真也 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会的ジレンマ / 利他的行動 / 流動性 / 制度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、流動的な社会関係においても人々が協力し合うことができる社会的メカニズムを解明することにある。本年度はこの目的を達成するために3つのテーマに取り組んだ。1つ目は、コミュニティ・ユニオンにおける集合行為問題、2つ目は、只見町における共有地管理問題、3つ目は、東日本大震災後の協力行動に関する計量的研究である。 1つ目のコミュニティ・ユニオンの研究では、主に理論的課題に取り組んだ。平成24年度までに行ったフィールドワークの知見を踏まえ、そこで行われている互酬的慣習に関して、数理モデルを用いて解析した。この結果、懲罰や義務が課せられる期間が長すぎないことや割引因子が十分大きいことなどが条件として得られた。また、ゲーム自体が永続するために、集団自体が流動性に対応する何らかのメカニズムを有している必要があることが確認された。この点は、制度とその外部の相互作用という本研究の基盤となる点であり、これを明確にすることができた。 2つ目の只見町における共有地管理問題に関しては、只見町に2回訪れ聞き取り調査や資料の収集を行った。聞き取り調査では、現在の共有地管理ルールの把握は完了させることができた。また、現在では、共有地の管理ルールが歴史的にどのように変化したのかを明らかにするために、過去の資料を収集している。次年度以降の理論的考察の基礎を固めることができた。 3つ目の東日本大震災後の協力行動に関する研究に関しては、申請書作成時にはなかったが、その後データを収集し分析する機会を得たので行っている。現時点での考察では、回答者の持つ社会関係やネットワークによって、利他行動を行うか否かが影響を受けているのではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の1つ目の研究では、数理モデルによる定式化を完了させ、2つ目の研究では、定式化のための経験的データを収集するという当初の目的を達成できた。それだけでなく3つ目の研究で、利他行動の計量分析をも行うことができた。これらの知見から、流動性のあり方、集団と外部の環境との相互作用についての見識を深めることができ、次年度以降の総合的な理論考察への足掛かりを作ることができた。そのため、当初の計画以上に実りのある研究を行うことができたと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず1つ目の研究では、集団に決まった人の数が参入するというモデルを定式化したが、次年度以降は人の出入りをパラメータとして組み込むことができるように、モデルを発展させ、流動性と互酬的慣習の関連を明らかにする。また、2つ目の研究ではこれまでで、集団外部の環境として、密猟者とうの人々の増加だけではなく、山菜価格の変化などのマクロな要因を考慮に入れ、歴史的に制度の変化を明らかにするという方針を固めた。そのため、次年度以降は、その山菜やキノコの取引か価格や取引量の変化に関する資料を収集する。 さらに、これらの異なる事例を統一的に把握するために、制度と外部環境の相互作用に関する先行研究を網羅的に参照し、理論的考察を行っていくことを今後の課題としたい。
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Research Products
(4 results)