2012 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋熱帯・亜熱帯における浮遊性カイアシ類の多様性と地理分布
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12J07024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 惇也 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カイアシ類 / プランクトン / 多様性 / 太平洋 |
Research Abstract |
浮遊性カイアシ類はプランクトンネットにより採取される動物プランクトンの約8割を占め、大きな生物量を誇る。また、多様性に富み、現在2000種以上が知られている。従来その分布や多様性の研究は形態分類によりなされてきたが、種同定には高い専門知識が要求される。一方、近年発展の目覚ましい分子生物学的手法を用いることで、形態情報に依らずに種分類することが可能となる。そこで、迅速かつ網羅的に遺伝子情報を得られる第二世代シーケンサーを用いた群集構造の把握方法であるメタゲノム解析手法をカイアシ類で確立することを目指した。また、確立した方法を用いて太平洋熱帯・亜熱帯における浮遊性カイアシ類の多様性と地理分布を明らかにするとこも目的とした。 現在までの研究で、カイアシ類のメタゲノム解析に最適な遺伝子領域は核DNAの28S領域であると判断した。その遺伝子領域を用いて既知のカイアシ類を入れた試料を解析し、大量の遺伝子配列データから群集構造を再現する方法を構築した。その結果、高い種レベルでの分解能を維持しつつ、エラーを除去し、試料内の情報を反映させるメタゲノム解析方法を確立することができた。また、確立されたメタゲノム解析の方法の有用性をプランクトンネットで採取された試料でも検証した。メタゲノム解析と形態分類で行った結果を比較すると、その結果はほぼ一致し、メタゲノム解析は現場の試料の解析にも適することが示された。また、形態分類では分類が困難であった分類群においても種レベルの解析が可能になり、本研究の手法の有用性がより高められた。 現在は確立された方法を用いて太平洋熱帯・亜熱帯のサンプルの解析を行っている。約20測点で採取された試料が解析済みであるが、今後さらに分析が進行し、太平洋熱帯・亜熱帯におけるカイアシ類の群集構造、またカイアシ類の群集構造からみる海洋像が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにカイアシ類の群集構造把握のためのメタゲノム解析の手法の確立を目標としたが、必要な手法の開発は予定通りに確立することがでた。また、その結果は期待以上であり、今後の研究に大いに生かせるものであった。また、一部の成果は論文化することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は確立された方法を用いて太平洋熱帯・亜熱帯の試料の解析を行い、太平洋熱帯・亜熱帯におけるカイアシ類の群集構造を明らかにすることとなる。その結果から各地点の優占種や多様性を明らかする。また、測点間の類似度も計算する。最終的にはカイアシ類の群集構造から太平洋熱帯・亜熱帯の海洋像をあきらかにする。
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Research Products
(4 results)