2012 Fiscal Year Annual Research Report
多様なオーキシン応答を引き起こす転写調節機構の基本原理
Project/Area Number |
12J07037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 大貴 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ゼニゴケ / オーキシン / 信号伝達 / 発生制御 |
Research Abstract |
本研究は単純な転写調節機構が複雑なオーキシン応答を生み出すメカニズムの解明を目指し、苔類ゼニゴケをモデルにTIRI/AFB-AUX/IAA-ARF相互作用を介したオーキシン転写制御機構について研究をおこなっている。ゼニゴケ形態形成におけるオーキシン応答の役割を調べるため、オーキシン低感受性を引き起こす安定型AUX/IAAの機能誘導系やARFノックアウト株を作成し表現型を観察したところ、配偶体の発生に様々な影響を与えることが明らかとなった。このことから、AUX/1飴やARFを介したオーキシン応答がゼニゴケの形態形成において重要な役割を果たすことが示唆された。それぞれの遺伝子の発現組織の解析も行い、AUXI/AAについては生活環全体で広く発現しており、3種あるARFのうちの一つは特定の器官で強く発現していることが明らかになった。 また、ゼニゴケにおいてもAUX/IAAとARF、TIR1/AFBが相互作用しオーキシン信号伝達を行っているかを確かめるため、BiFC法とYeasttwo-hybrid法による検証を行っている。予備的なデータではあるが、これまでに多くのIAAとARF、またARF同士が相互作用することが確認されている。 さらに、ゼニゴケにおけるオーキシンによる遺伝子発現の変化について理解するため、オーキシン応答遺伝子の候補について定量的RT-PCRによる遺伝子発現解析を行った。その結果、ゼニゴケのオーキシン応答遺伝子の発現パターンは複数あり、フィードバック阻害を受ける場合もあるということが示された。また同定されたオーキシン応答遺伝子の発現がAUX/IAAによって制御されていることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はコケ類ゼニゴケのオーキシン信号伝達の仕組みと生理的役割の解明であり、そのためのに(1)形質転換体、変異体の表現型解析、(2)オーキシン信号伝達因子の発現解析、(3)タンパク質相互作用の検証、(4)下流遺伝子の探索と発現動態の解析を行う。(1)(2)についてはおおむね解析ができており今後はより詳細な解析を行いたい。(3)については予備的なデータが得られているため、複数の手法で確認を行う。(4)については内在のオーキシン応答遺伝子をすでに得ており発現解析を行った。今後RNA-seqによる下流遺伝子の網羅的探索を行う予定だが、サンプルの提出はすでに終わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作出した形質転換体や変異体について樹脂切片を作るなど細胞レベルでの詳細な観察を行う。またタンパク質相互作用の検証について、複数の手法で実験を行いデータを固める。さらに、ゼニゴケにおけるオーキシン応答遺伝子、特にMpIAAに制御される遺伝子を網羅的に探索するため、オーキシン処理した野生株、安定型MpIAA誘導系でオーキシン応答を抑制したサンプルについてRNA-seq法を行う。これらの実験を通して、ゼニゴケがTIR1/AFB-AUX/IAA-ARF相互作用を介したオーキシン転写制御機構を持つことを証明し、生理的な役割や遺伝子発現制御の様式を明らかにする。さらに被子植物での知見と比較し、オーキシン転写制御機構の陸上植物に共通する基本原理や進化についての理解を深める。
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Research Products
(4 results)