2013 Fiscal Year Annual Research Report
共有結合の解離・形成制御に基づく機能性架橋ポリマーの創製
Project/Area Number |
12J07074
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
今任 景一 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自己修復 / 架橋ポリマー / ゲル / メカニズム |
Research Abstract |
本研究では、室温・空気中という穏和な環境下で自発的に解離・再結合を行う化合物(DABBF)を高分子材料に応用することで、バルク状態で自己修復可能な材料を開発し、さらに高強度ナノファイバーとのコンポジットにより高強度化を、表面自由エネルギーが小さく、空気中で材料表面に集まる性質を有するフルオロアルキル基を用いることで高修復性を達成することを目的としている。 これまでに、溶媒を含んだゲル状態で修復可能な材料の調製に成功しており、初年度は本研究課題の最大の目標でもあった「溶媒を含まないバルク状態で修復可能な高分子材料」を調製する予定であった。残念ながらこの目標の達成には到らなかったが、初年度はDABBFが示す自己修復性ではない新たな特性、「凍結誘起のメカノクロミズム」と「温度応答性の膨潤挙動」を見出すことに成功した。これらの現象は、DABBFを用いた自己修復材料の修復機構の理解へと繋がることから非常に興味深い結果であった。 以上の結果を踏まえ、今年度は分子設計を再考して、「溶媒を含まないバルク状態で修復可能な高分子材料」の調製を行った。得られた架橋ポリマーは30~50℃といった穏和な環境下で自己修復を示すことが明らかとなり、引張試験を用いて定量的に修復性を評価した結果、50℃おける12時間の修復で元の力学物性の90%以上の値を示すことも分かった。また、この修復のメカニズムを詳細に検討するため、電子スピン共鳴測定を用いて架橋ポリマー中のDABBFの状態を解析し、動的粘弾性測定を用いて架橋ポリマーの状態を評価した結果、温度上昇とともに解離したDABBFの割合と分子鎖の運動性が増加し、これらの効果が相乗的に架橋ポリマーの修復性を上げることが明らかとなった。 このように本年度は本研究課題の最大の目標であった「溶媒を含まないバルク状態で修復可能な高分子材料」の調製に成功し、その修復メカニズムの詳細な解析を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最大の目標であった「溶媒を含まないバルク状態で修復可能な高分子材料」の調製に成功し、その修復メカニズムの詳細な解析を行うことができたが、最終目標である高強度ナノファイバーとのコンポジットやフルオロアルキル基を用いた効率的な修復の実現を達成するには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で調製した「溶媒を含まないバルク状態で修復可能な高分子材料」を用いて、最終目標である高強度ナノファイバーとのコンポジットやフルオロアルキル基を用いた効率的な修復を試みる。
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Research Products
(7 results)