2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J07076
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 義明 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 注釈史 / 注釈 / 和漢朗詠集 / 和漢朗詠集註 / 北村季吟 / 近世文学 / 和歌 / 漢詩 |
Research Abstract |
本研究は、江戸時代における『和漢朗詠集』受容を、注釈書に焦点をあてて解明するものであり、1年目は江戸時代初期の北村季吟による注釈書『和漢朗詠集註』(寛文11年刊、10巻10冊)を精査した。『和漢朗詠集』には、中古・中世を通して編まれた複数の系統の注釈書があるが、それらは詩文への注釈が主流であり、和歌へのそれは一般的に知られなかった。近世に入り成立した『和漢朗詠集註』は、和歌と詩文の双方の注を備えた、いわば完全な形のはじめての『和漢朗詠集』注釈書刊本であった。 研究内容は、同書中にあって成立過程の異なる和歌注・詩文註を分けて分析、先行の注との対照を行い、そこから窺い知れる該書の意義とその注釈方法を明らかにしたものである。 和歌注には、長らく際立ったものはなかったものの、他の歌書(『伊勢物語』、『古今和歌集』)等に注をもつ和歌が収載されており、季吟がそれらをいかに編集したのかを見た。この和歌注には、彼の独自の説と思しき記述が多分に含まれており、その特徴をまとめた。 詩文注は、これまで中世までに成立した永済注系注釈書をそのまま用いたものと見なされてきたが、季吟による操作がほとんどの佳句注に含まれていることを指摘し、その方法を分類することで、彼の関与が多大であったことを明らかにした。 上記の研究結果と、伝統ある歌学関係書を刊行すること自体に抵抗のあった当時において、季吟がその後続々と歌書の刊行(『伊勢物語拾穂抄』、『湖月抄』など)に踏みきったことを考えれば、該書が歌学書的にも、彼自身の業績としても記念碑的な作品であると位置づけることができる。 この研究は、初学者向けの書として長く読み継がれた『和漢朗詠集』の受容のありかた追うことにつながることはもちろん、その各注者の注釈方法についての解明にも応用することができる。2年目以降は江戸時代中期、後期の『和漢朗詠集』注釈を研究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、1年目は、北村季吟の注釈書である『和漢朗詠集註』のみの研究を目していたが、同時期の注釈書である岡西惟中の『和漢朗詠諺解』についても分析ができ、それを第23回九州近世文学研究会(平成25年1月26日、九州大学)にて口頭発表を果たした。このため2年目以降の研究へと滞りなくシフトすることができる。 また、国文学研究資料館、国立公文書館、神宮文庫といった和本の所蔵機関に赴くことができ、『和漢朗詠集』の版本調査を行い、近世における『和漢朗詠集』受容を解明するためのよい結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1年目で行った研究手法を応用し、江戸時代初期の岡西惟中、中期の高井蘭山、後期の山崎美成のそれぞれの『和漢朗詠集』注釈書の精査を行い、同時に彼らの注釈手法を明らかにする。 版本調査については、2年目以降も継続して行い、江戸時代における『和漢朗詠集』受容の全貌を明らかにする。
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Research Products
(2 results)