2012 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性体と接合したトポロジカル絶縁体のスピン電子構造の解明
Project/Area Number |
12J07179
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒田 健太 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / ビスマスセレナイド / グラフェン / 光電子分光 |
Research Abstract |
トポロジカル絶縁体ビスマスセレナイドと強磁性体ニッケルとの接合(ビスマスセレナイド/グラフェン/ニッケル)の作成を行い、角度分解光電子分光を用いてトポロジカル絶縁体におけるディラック電子の磁場依存したスピン電子構造を放射光スピン角度分解光電子分光測定により解明する事を目的として、本年度は、1、ビスマスセレナイド薄膜の作成及び膜厚を評価するためのシステムの構築及び接合作成と2、高効率スピン偏極検出器を広島大学放射光研究センターのビームラインに接合し、放射光三次元スピン分解装置の開発を行った。 1、グラフェン作成用にプロピレンガスのガスラインを整備し、ニッケル清浄表面にグラフェンを成長させる事に成功した。同時に、高速電子線回折振動の解析用に購入したパソコンにプログラムを導入した。また、基板を電子衝撃加熱しながら高速電子線回折振動の観測を行うため、カメラにフィラメントの光が入りこまないようにフィラメント周辺のカバーリングを行った。これにより、ビスマスセレン薄膜作成及び評価システムの構築が完了した。次に、ビスマスとセレンをグラフェン/ニッケル上へ同時蒸着した。その結果、高速電子線回折振動を観測する事に成功した。ビスマスセレナイドがグラフェン/ニッケル上に成長していると考えられる。 2、 高効率スピン偏極検出器を新たに追加して、三次元的にスピンを決定できるように改良した。その後、広島大学放射光科学研究センターのアンジュレータビームラインに接続し、放射光を用いたスピン角度分解光電子分光装置を完成させた。また、超高真空を破らずに1で作成した試料を立ち上げた装置での測定を実現させるために、グラフェン作成用の小チャンバーとその輸送システムを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体と強磁性体ニッケル接合の作成が平成24年度の主な目的であったがこの点においては達成した。現段階では、作成した試料の評価は高速電子線回折像の強度振動でのみ評価を行っている。走査型トンネル顕微鏡や光電子分光による詳細な試料評価まで行っていないという点で減点した。
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Strategy for Future Research Activity |
ビスマスやセレン蒸着発射口(ファイ2ミリ)を塞いで固化してしまい、ニッケル表面に一定速度で蒸着できなくなるという問題が起こった。そこで、本年度は発射口を広げるなどで、液体が発射口に流れ込まないように蒸着システムを少し改良する。その後、確立した作成方法を使って、放射光ビームラインで試料を作成し、1、角度分解光電子分光により、膜厚依存性まで含めて電子状態を評価する。その後、2、スピン角度分解光電子分光によりニッケル基板の磁化に依存したスピン電子状態を解明する。1、により電子状態を評価できた後、論文執筆投稿し、国内外の学会で発表する。
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