2013 Fiscal Year Annual Research Report
三次元行動情報を用いた外洋性魚類の採餌生態に関する研究
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12J07184
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 乙水 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マンボウ / サメ / 採餌生態 / 行動 / バイオロギング |
Research Abstract |
本研究は、高次捕食者であり生態系に大きな影響をもつと考えられる外洋性大型魚類について、これまで直接観察することの難しかった採餌行動を調べることを目的とした。三陸沿岸のマンボウ、ハワイ諸島のサメ類について動物搭載型の三次元行動記録計と視覚的記録装置を用いた行動調査を実施した。 1. マンボウ これまでの研究によって、海面を浮遊していると考えられていたマンボウが深度数百メートルまで潜ることがわかってきた。前年度の調査ではマンボウは海面と深度100~200メートルを行き来し、深度100~200メートルにおいてクダクラゲ類を捕食していることが判明した。今年度は、クラゲ類を捕食する時の行動の詳細と、採餌中のマンボウの体温調節についての実験を行った。マンボウがクラゲ類を捕食する際に、減速してアプローチする場合と加速してアプローチする場合が見られた。加速してアプローチする場合は明るい深度50メートル以浅においてよく見られ、マンボウが視覚を使ってクラゲ類を探索していることが示唆された。マンボウの体温は、水温が低い深度100~200メートルにおいて低下し、温かい海面において上昇していたことから、温かい海面の水から熱を吸収して体温を回復することが明らかとなった。また、熱収支モデルを用いた推定結果から、体温回復時に生理的な調節により熱の吸収効率を上げて体温回復に要する時間を短縮し、採餌に充当する時間を増大させていることが示唆された。 2. サメ類 ハワイ諸島周辺海域には高次捕食者として複数種の大型サメ類が生息している。前年度まで浅海域において数の多いイタチザメ、ヤジブカ、ガラパゴスザメの採餌行動の調査を行い、それぞれの種が異なる深度帯を主に利用するという住み分けを行っていることが示唆された。そこで、今年度の調査ではより深い深度に生息する深海性のサメ類の行動調査を実施した。その結果、深海性サメ類は日周鉛直移動を行い浅い深度も利用することが明らかとなり、浅海性のサメ類と生息深度にオーバーラップがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マンボウの採餌行動の解明に加えて、体温調節行動を解明することができ、採餌生態を複合的に解釈することができるようになった。また、浅海性のサメ類に加えて深海性のサメ類から行動データを取得することに初めて成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験からマンボウが深く冷たい深度で採餌を行った後、しばらく温かい海面に滞在して体温を回復していると思われる行動的体温調節が示唆された。その時に生理的な調節を行って熱の吸収効率を高めていることが示唆された。外界との熱の交換は, 主に表面積の大きい鰓で行われている可能性がある。今後は鰓の表面積とそこを流れる血流に着目して、生理的な調節の詳細を調べることを目標にしている。
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Research Products
(3 results)