2012 Fiscal Year Annual Research Report
餌資源のストイキオメトリックな改変に伴う生物間相互作用の変化
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12J07244
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田 民久 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Ecological stoichiometry / 生物多様性 / 生態系機能 / 河川生態系 |
Research Abstract |
近年,生物多様性と生態系機能との間に関係性があるという報告が多くなされている。しかし,そのメカニズムの解明には至っていないのが現状である。私は河川生態系における重要な生態系機能である落葉リターの分解速度とそれらを摂食する腐食動物の多様性に着目した。河川生態系における腐食動物は種間で体組織を構成している栄養塩比率(例えば炭素(C):窒素(N):リン(P))が異なる。また同様に彼らの餌資源である落葉リターのC:N:P比も種間で大きく異なる。つまり,NやP等の栄養塩が豊富な体組織を有する腐食動物はより栄養塩豊富な落葉リターを摂食する,というように河川の腐食動物は体を構成している元素比率が異なることで,好んで摂食する落葉リター種が異なることが考えられる。もし上記のようなことが生じる場合,腐食動物の体組織のストイキオメトリック(化学量論的)な多様性が高い方がより効率よく落葉を分解することが考えられる。そこで昨秋,私は様々な質のリターを小容器に投入し,そこに腐食動物をストイキオメトリックな多様性を処理ごとに変えて投入するマイクロコズム実験を行った。そして実験終了後,落葉リターの分解速度を処理間で比較してやった。加えて,実験終了前後の落葉リターの化学特性や微生物コロナイジング量の定量等の化学実験を行っており,現在も継続中である。現在までの結果として,予想通り腐食動物のストイキオメトリックな多様性が上昇するに従って落葉リターの分解速度も上昇する傾向が観察されている。本研究は,河川腐食動物の多様性が落葉リターの分解という他の群集および生態系の安定性に影響を与えかねない要因を変動させることを示唆し,そのメカニズムに迫る一歩となりえるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨秋の室内実験の結果,自らが唱えていた仮説を概ね指示する結果となった。その結果,研究の最終目標である論文の執筆に順調にとりかかることができそうである。ただ,解析手法等,検討すべき問題が少しある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨秋に得られた室内実験および現在継続中の化学実験のデータを解析する。また,国際誌に投稿するための論文の執筆を開始する。交付申請書には野外調査も同時に行う予定であったが,室内実験のサンプル数が膨大になり化学実験等に相当の時間がかかるため,野外調査は今後の課題とする。
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Research Products
(2 results)