2012 Fiscal Year Annual Research Report
ガス分子貯蔵と変換を目指した機能性リゾチーム結晶の創製
Project/Area Number |
12J07245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田部 博康 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛋白質結晶 / 金属錯体 / リゾチーム / 生体ガス分子 |
Research Abstract |
本申請では、化学反応場とみなした蛋白質結晶内部に金属錯体を導入し、ガス分子の生成、貯蔵、放出を行う方法を確立する。具体的には、内部に金属錯体を集積することができる細孔構造を持つ鶏卵リゾチーム結晶に金属錯体を導入することで、ガス分子を基質、生成物とする触媒反応を行う。高い触媒活性をもつ金属錯体を安定に集積可能である多孔性材料はほとんど報告されておらず、多孔性リゾチーム結晶結晶の利用が必要不可欠である。 本年度は、リゾチーム結晶にカルボニル錯体を導入し、カルボニル配位子由来の一酸化炭素(COガス)貯蔵、生成、放出を検討した。固体材料を用いたCOガス制御方法は、既存の合成分子(ポリマー、無機材料等)では困難であったが、多孔性リゾチーム結晶を用いることで初めて可能になり、新たなガス分子制御材料の創製に繋がると確信する。 (1)リゾチーム結晶にカルボニル錯体を導入することで、リゾチーム結晶内部に多数存在するイミダゾール(ヒスチジン)、カルボン酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)に錯体を結合させた。各種分光測定と単結晶X線構造解析により、CO分子の貯蔵を確認した。 (2)COガス受容分子であるミオグロビンと複合体と反応させることで、カルボニル錯体からのCOガス生成および放出を行った。COガス生成、放出反応を細胞培地中でも行うことで、細胞へのCOガス導入を行った。その結果、細胞内のCO応答因子の活性化を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付時に申請した蛋白質結晶内で貯蔵、生成および放出を行うガス分子のうち、最も困難であるCOガスについて達成の知見を見出した。さらに蛋白質結晶の生体親和性を活かし、細胞へのCO分子導入および応答研究を行った。COガスを細胞に導入可能である材料はこれまでに開発されておらず、本材料を利用した研究により今後細胞生物学の研究に高いインパクトを与えると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ガス分子を貯蔵、生成および放出を行う生体親和性材料の構築と細胞機能制御への展開を推進している。今後は、単結晶X線結晶構造解析に基づく精密かつガス分子制御システム構築を他のガス分子について行う。さらに、細胞への各種ガス分子導入を行うことで、ガス分子と細胞内化合物の相関を明らかにする。
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Research Products
(11 results)