2012 Fiscal Year Annual Research Report
真の天然の水酸化鉄である微生物生成水酸化鉄が微量元素の環境挙動に与える影響の評価
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12J07248
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菊池 早希子 広島大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 水酸化鉄 / 鉄酸化菌 / ヒ素 / Bacteriogenic iron oxides / 吸着 |
Research Abstract |
本研究では、微生物由来の水酸化鉄(Bacteriogenic iron oxides:以下BIOSと記す)が吸着を通して微量元素循環に及ぼす影響について評価することを目的としている。BIOSは地球表層に広く存在する吸着能に富む鉱物のため、吸着を通して地球上の元素循環を支配していると考えられる。一方で実際にBIOSを使用した実験は少なく、無機水酸化鉄がBIOSの代用として用いられているのみである。環境に対するBIOSの影響を正しく評価するためには、BIOSそのものを用いて実験を行うことが重要であり、以上のことを達成するため本年度は以下のとおり実施した。 1.有害元素であるヒ素を対象とし、(i)熱水噴出口で採取したBIOS,(ii)室内で鉄酸化菌を培養して得たBIOS,(iii)無機水酸化鉄のそれぞれにpH4・9の条件下でヒ素を吸着させる実験を行った。 2.実験後、固相と液相を分離し、液相側のヒ素濃度をICP-MSを用いて測定した。固相側については大型放射光施設SPhng-8 BL01B1においてヒ素K端のXAFS測定を行い、吸着構造解析を行った。 3.それぞれの鉱物に吸着したヒ素の濃度・吸着構造結果を比較した。 結果については以下の通りである。 1.BIOSのヒ素吸着能は無機水酸化鉄よりも劣る。 BIOSは無機水酸化鉄と同様に細粒な水酸化鉄から成るが、ヒ素吸着量は無機水酸化鉄よりも低い値を示した。よって、天然で生じているヒ素吸着能は、これまで無機水酸化鉄を用いて求められてきた推定値よりも劣ることが明らかとなった。 2.BIOSへのヒ素吸着構造は無機水酸化鉄と同様である。 それぞれの鉱物に対するヒ素吸着率は異なったが、吸着構造はすべての鉱物で同様であり、主に鉄に吸着していた。このことは、BIOSへのヒ素吸着量の低下はBIOSに含まれる鉄以外の要因によって生じていることを示していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にBIOS全体のヒ素吸着能について解明することを目的としていた。この点において、(1)吸着実験を通したマクロに生じるBIOSへのヒ素吸着反応の定量的議論,(2)吸着構造といった、吸着現象を生じさせる分子構造的なミクロの現象まで捉えることができており、目標を十分達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、いくつかの物質が混合して出来たBIOSを一つの物質と捉え、吸着反応について議論してきた。しかし、本来BIOSは水酸化鉄、有機物、微生物の混合体である。よって、それぞれの物質が個々に影響または相互作用し合い、吸着反応が生じている。今後の研究ではこれらの点に注目し、BIOS中の物質一つ一つの効果や相互作用について解明していく。また同時に、BIOSへのヒ素吸着能を低下させる具体的な要因についてもゼータ電位測定や表面積測定を行うことで議論していく。
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Research Products
(2 results)