2012 Fiscal Year Annual Research Report
和合変異体を用いた遺伝学・オミックス解析の融合による自家不和合性分子機構の解明
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12J07259
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大坂 正明 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / 次世代シーケンサー / 遺伝学 |
Research Abstract |
アブラナ科植物における自家不和合性研究は、8遺伝子による認識反応の実態が明らかにされた以降、自家花粉の拒絶に至るまでのシグナル伝達経路の解明へと研究焦点がシフトした。申請者は、新規自家不和合性関連遺伝子の単離・同定を目指すとともに、自家不和合性分子機構の全体像解明を目指した基盤構築を進めている。 本研究では、新規の自家不和合性関連因子を同定することを目的に、自家和合性を示す変異系統2系統TSC(Talentedself-compatibility)4,TSC28を見出してきた。これら系統の自家和合性は、花粉側・柱頭側8遺伝子以外に由来し、8遺伝子の発現には影響を与えていないことは明らかになっていた。昨年度は、これまでに明らかにした自家和合性変異系統TSC28の変異遺伝子座領域の詳細連鎖地図を作成し、変異遺伝子の座乗位置を6cM内に絞り込んだ。また、TSC4については複数遺伝子座での変異が遺伝学的に推定されており、他の変異遺伝子座の同定に向けた遺伝解析を行ってきた。また、近年、研究材料のB.rapaの全ゲノム配列が解読され、自家不和合性分子機構の情報基盤構築を以下の方法で行ってきた。雌しべにおける自家不和合性機構は、花粉が接着する柱頭表面の乳頭細胞に開花前目にすでに備わっている。そこで、レーザービームを使用して顕微鏡下で細胞・組織を特異的に単離するレーザーマイクロダイセクション(LM)装置によって開花前日の乳頭細胞を特異的に単離し、それらから抽出したmRNAを用いて次世代シーケンサー(NGS)による網羅的発現遺伝子解析を行った(LM-NGSトランスクリプトーム)。得られた発現遺伝子情報は、明らかになった全ゲノム配列をもとに、染色体上の存在位置を明らかにし、乳頭細胞で機能する遺伝子群とそれらの染色体上での存在位置を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Brassicaragaを材料に、自家不和合性分子機構の解明を目指し、遺伝学や次世代シーケンサーを用いて解析を行ってきた。その間、次世代シーケンサーの解析に伴い他の研究室とも積極的に共同研究を行ってきた。さらに、遺伝学といった伝統的な解析に加えて、次世代シーケンサーを用いた先進的な解析を行うことで、研究者としてのスキルアップに取り組んできたことから順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TSC各系統における遺伝解析とLM-NGSトランスクリプトーム解析を融合し、TSC各系統の変異遺伝子座上領域内の乳頭細胞発現遺伝子を選抜し、これら遺伝子について野生型系統とTSC系統間で塩基配列や発現量等の比較を行うことで、TSC系統が有する自家和合性原因遺伝子を絞り込んでいく。選抜した候補遺伝子について、植物発現用バイナリーベクターに組み込んだコンストラクトを作成し、アグロバクテリウム法を用いてTSC各系統の形質転換体を作成する。作成した植物体の表現型を観察し、自家不和合性が回復する遺伝子を特定することで、TSC系統の原因遺伝子を同定する。
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Research Products
(4 results)