2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07288
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中林 紀之 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス / スピン軌道相互作用 / スピン起電力 / ゲージ場 / 異常ホール効果 / 逆スピンホール効果 |
Research Abstract |
局在スピンのダイナミクスおよびスピン軌道相互作用によって駆動される電流について、従来の逆スピンホール効果による電流生成に代わり、有効的な磁気モノポールと、磁化流に対するアンペール則によって電流が生成される、というシナリオが最近提案された。しかし、理論と実験との定量的比較などによるこのシナリオの検証はまだなされていない。本研究では、駆動場などの異なるいくつかの系について有効磁気モノポールおよび電流を求めることにより、いままで逆スピンホール効果によると考えられてきた現象を、上と同様に有効磁気モノポールによって理解が可能であることを確かめることを目標とする。この有効磁気モノポールを見積もるためには、駆動場によって生じる有効場の解析が必要である。 本年度は、伝導電子と局在スピンの問の交換相互作用が強い領域(強結合領域)において、スピン軌道相互作用と磁化の構造によって作られる有効電場および有効磁束密度を、非平衡グリーン関数の手法を用いて理論的に解析した。有効電場については、スピンに働く力の演算子から、ラシュバ型スピン軌道相互作用の一次と不純物スピン軌道相互作用の二次まで考慮して解析を行った。有効磁束密度についてはラシュバ型スピン軌道相互作用の一次までを考慮した解析を行った。この方法は、間接的な方法であり、いくつか問題点が存在するが、加えて有効磁束密度引き起こすホール効果について解析を行うことで、正しい有効磁束密度を見積もることができた。以上の結果から、ラシュバ型スピン軌道相互作用によって引き起こされる逆スピンホール効果は、強結合領域においては、有効磁気モノポールでは説明できない事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究とは異なり、本研究で解析した強結合領域では有効磁気モノポール(流)の存在に深くかかわるために透磁率に相当する係数を決定する必要があった。また、スピンの減衰に関わる寄与を得るために、スピン依存不純物をあらわに考慮する必要があり、予想以上に解析に手間取った。
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Strategy for Future Research Activity |
強結合領域において、ラシュバ型スピン軌道相互作用によって生じる有効場の満たすマクスウェル方程式からは有効磁気モノポール(流)は生じない。すなわち、このような場合には逆スピンホール効果は有効磁気モノポールによって説明することができない。そのため、今後は有効磁気モノポールの見積もり方法、適用範囲を見直すとともに、スピンのダンピングの関わらない系などについてはスピン流を介さない、新たな逆スピンホール効果の解釈の方法がないか探る。
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Research Products
(2 results)