2012 Fiscal Year Annual Research Report
河川生態系における水生菌類の群集構造決定機構の解明
Project/Area Number |
12J07309
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 彩 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 菌類 / 微生物 / 多様性 / 河川 / 環境勾配 |
Research Abstract |
本研究は、河川の環境勾配に沿った水生菌類の種数・種組成の変化を調べることで、菌類の群集構造とその決定機構を解明することを目的としている。落葉や木材等の、陸上から河川に流下した有機物から検出される水生菌類の群集構造は、それぞれの基質によって異なることが知られているため、河床の石表面に付着している菌類群集もまた、河川に流入する有機物の質や量を反映しその構造が変化すると考えられる。本研究では2011年10月と2012年5月に、宮城県名取川水系の12地点で河床の石表面に付着する菌類群集を、DGGE法により種数を計測した。これをもとに、水生菌類の群集構造の空間的・季節的な変化を調べた。 その結果、各地点で確認された種数(γ多様性)は、秋よりも春の方が大幅に少なかった(秋平均:103.9種、春平均:55.9種)。また、1つの石上で確認された菌類の平均種数(α多様性)は、流量の増加とともに有意に増加する傾向がみられた(r=0.81,p<0.01)。しかし、この傾向は春には確認されず、α多様性も大きく減少した。さらに、種の在・不在データを用いたCCAの結果から、集水域内の土地利用や、水中に含まれる栄養塩の量や質(TOC、TN、TP量など)が似ている地域ほど、群集構造が類似していることが示唆された。 これらの結果は、研究が立ち遅れている水圏における水生菌類の分布特性や、生態系機能についての理解を深める上で重要な知見となる。例えば、河川では重力の作用により物質が上流から自然に海へと流下してしまうが、水生菌類がさまざまな流下中の有機物を同化することで滞留時間を高め、細菌や水生昆虫の資源となることで陸上に物質を転移させる機能を担っている可能性がある。このように個々の生態だけでなく、従来着目されてこなかった水生菌類群集の河川生態系における役割を把握するための研究として、本研究は新規性の高い研究だといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は河川内で、石の表面に付着する菌類群集の多様性について、空間的・時間的な変化を明らかにすることができた。また、次の段階として計画していた操作実験にも着手することができた。このため、本課題はおおむね順調に進展しているといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、操作実験やさまざまな基質(タイル、落葉など)を用いた実験について、補足調査と更なる解析を実施する予定である。また、シーケンス精度を向上するために、次世代シーケンスデータの扱いについても勉強していこうと考えている。このことで、より詳細な菌類の群集構造の決定機構を検討していくことができると考えられる。
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Research Products
(3 results)