2013 Fiscal Year Annual Research Report
河川生態系における水生菌類の群集構造決定機構の解明
Project/Area Number |
12J07309
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 彩 東北大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 菌類 / 微生物 / 多様性 / 河川 / 石上群集 / 土地利用 / 有機物 / 栄養塩 |
Research Abstract |
菌類は分解者としての重要性が知られており、高分子や難分解性の有機物を分解できる系統も多く存在する。河川においても、流入する落葉や木材等の陸生由来である有機物(他生性有機物)の分解を担っており、なかでも特に河床の石表面の菌類群集は、有機物を取り込むことで河川内にそれらを貯留し、さらに高次捕食者へ転流するという重要な役割を果たす。これらの種構造は空間的または季節的な水中や石上の有機物の変化に影響されていると考えられるが、未だ不明な点が多い。石上着生の菌類は、水中から供給される他生性有機物のほかに、石上に同所的に生息する藻類や細菌類による相互作用も強く受けていると考えられる。しかし、他生性有機物と藻類や細菌類に由来する有機物(自生性有機物)の相対的な影響はわかっていないため、今年度は、宮城県名取川水系内の3カ所の異なる環境条件をもつ流域に、光条件の異なるタイルを設置して、浸水培養実験を行った。 その結果、菌群の種数は流域的な他生性有機物の差による違いはないが、光環境下で暗環境下よりも有意に多かった。このことは、複数の系統が光環境下で自生性の栄養を好んで利用するということを示している。また、群集内の種組成(群集の類似性)は、流域ごとに有意に異なる(ターンオーバー)ことが示された。このことから、種組成は流域間の他生性有機物の差を反映し有意に変化するが、自生性栄養の加入がある場合、さらに流域内でも変化することが示唆された。さらに、3ヶ月後の発達した石上菌群の種組成は他の時期よりも、藻類の存在量による影響が大きかった。これは、時間的な石上群集の発達とともに、受け取る自生性有機物の影響が強くなることで、菌群の種組成が変化していることを示唆している。今回の成果は、単に菌群の生態研究としてだけでなく、石上菌類と密接に関係する藻類や細菌群集、そして高次捕食者とのかかわりのなかで、水生菌類群集が河川生態系に果たす役割を俯瞰的に考察するために新規性の高いものだといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(3 results)