2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07331
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
住谷 瑛理子 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 骨芽細胞 / 神経突起 / 分泌タンパク質 / 臓器間クロストーク |
Research Abstract |
本研究では、骨が分泌し骨以外の組織に作用する分子の同定および機能解析を行うことにより骨による全身制御機構を明らかにすることを目指している。平成24年度は神経突起誘導活性を示す骨芽細胞分泌分子の探索に取り組んだ。 ラット褐色細胞腫から樹立されたPC-12細胞は神経栄養因子(NGF)の添加によって神経突起伸長が誘導され、神経様の細胞に分化することが知られている。PC-12細胞のこの性質を利用して、骨の細胞が神経突起を誘導する分子を分泌するかを調べた。マウス頭蓋冠細胞から分化誘導した骨芽細胞の培養上清濃縮物をPC-12細胞に作用させたところ、神経突起様の構造が誘導された。骨芽細胞培養上清濃縮物中のNGFを定量したが、培養上清濃縮物のNGF濃度は神経突起を誘導する濃度に満たなかった。これらの結果から骨芽細胞が神経突起誘導作用を示す分子を分泌し、且つこの分子はNGFではないことがわかった。そこでこの活性本体をPC-12細胞の神経突起誘導活性を指標にして精製することを試みた。 活性分子は60℃30分処理により失活し、エタノールおよび硫酸アンモニウムにより沈殿したことから、タンパク質であろうと考えた。種々の検討より、活性分子は陰イオン交換カラムDEAE sepharoseの素通り画分を陽イオン交換カラムSP sepharoseに吸着させ500mM NaClで溶出した画分に含まれることを見出した。今後、この活性分子を質量分析により同定する予定である。 本研究により他臓器制御に働く新たな骨分泌因子が同定されれば、臓器間クロストークの理解に寄与するだけでなく、歯や骨疾患に付随する疾患の発症機構に示唆を与える知見となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は計画した通り、骨芽細胞の培養上清中にPC-12細胞の神経突起伸長を誘導する活性を見出し、この活性分子の精製を進めた。イメージングサイトメーターを用いた神経突起誘導活性の評価系を立ち上げたのち、精製の条件検討を重ねた。その結果、精製条件は概ね定まり、現在、活性分子の同定まであと一歩のところまで来ている。今後の更なる実験によりこの分子が同定され、その生体内における機能が明らかになれば、骨による神経系の制御を示す初めての知見となることが期待される。以上のことから、研究はおおむね順調に進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ計画通りに研究が進行しているので、今後も当初の計画に則り、神経突起誘導活性を示す骨分泌分子を質量分析により同定しようと考えている。活性分子の候補が同定されたら、まずPC-12細胞にその分子を過剰発現することによって神経突起伸長が誘導されるかを調べ、骨芽細胞培養上清中の神経突起誘導活性をこの分子で説明できるかどうかを検証する。また、同定したタンパク質が初代培養の神経細胞の分化や生存に影響をおよぼすか否かを検討する。さらに、同定したタンパク質の生理的意義を明らかにするために、その分子をコードする遺伝子を骨芽細胞特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスを作製し、神経系に表現型があらわれるかどうかを調べることを予定している。
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Research Products
(2 results)