2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07331
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
住谷 瑛理子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 骨芽細胞 / 神経突起 / 分泌タンパク質 / 臓器間クロストーク |
Research Abstract |
本研究では、骨から分泌され骨以外の組織に作用する分子の同定および機能解析を行うことにより骨による全身制御機構を明らかにすることを目指している。 前年度の研究において、マウス頭蓋冠細胞から分化誘導した骨芽細胞の培養上清濃縮物がPC-12細胞に神経突起様の構造を誘導することを見出した。そこで平成25年度はこの活性本体を精製することを試みた。活性分子は60℃ 30分処理により失活し、エタノールおよび硫酸アンモニウムにより沈殿したことから、タンパク質であろうと推定した。精製の第一段階として骨芽細胞培養上清を25~60%飽和硫酸アンモニウム沈殿により濃縮した。骨芽細胞培養上清に含まれる大量のコラーゲンが活性分子の各種カラムによる分離を阻害することが判明したので、硫安沈殿画分をコラゲナーゼ処理するステップを導入した。次にコラゲナーゼ処理画分を陰イオン交換カラムDEAEセファロースに供し、その素通り画分を陽イオン交換カラムSPセファロースに吸着させ500mM NaClで溶出した画分が高い比活性を示すことを突き止めた。さらにこの画分をゲルろ過カラムSuperdex200により分子サイズで分画したところ、活性は主に30kDaより小さいタンパク質か含まれる画分に検出されることがわかった。次に上記の5段の精製ステップを経て得られた部分精製画分に含まれるタンパク質をLC-MS/MSにより分析した。その結果、259タンパク質が同定され、うち分泌タンパク質は94あった。このうち、神経系への関与が報告されている因子が53あった。これらの遺伝子の過剰発現、もしくはこれらの遺伝子の組み合わせの過剰発現が神経細胞の分化や保護に働くかどうかを今後調べていくつもりである。活性分子が同定され、生体内における機能が明らかになれば、骨による神経系の制御を示す重要な知見となることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、骨芽細胞が分泌する神経突起誘導因子の精製を試みた。その結果、5段の精製ステップを経て得られた活性画分中のタンパク質を質量分析により同定することに成功し、活性分子の候補を複数得るに至った。現在、活性分子の同定まであと一歩のところまで来ている。今後の更なる実験によりこの分子が同定され、その生体内における機能が明らかになれば、骨による神経系の制御を示す初めての知見となることが期待される。以上のことから、研究はおおむね順調に進展したと評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ計画通りに研究が進行しているので、今後も当初の計画に則って推進するつもりである。平成25年度の研究から活性分子の候補が得られたので、今後PC-12細胞に候補タンパク質を作用させることによって神経突起伸長が誘導されるかを調べ、骨芽細胞培養上清中の神経突起誘導活性を説明できる分子を同定する。また、同定したタンパク質が初代培養の神経細胞の分化や生存に影響をおよぼすか否かを検討する。さらに、同定したタンパク質の生理的意義を明らかにするために、その分子をコードする遺伝子を骨芽細胞特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスを作製し、神経系に表現型があらわれるかどうかを調べることを予定している。
|