2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲルにおける知の主体性の本質についての研究 -固有なものへの問い-
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12J07343
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶺岸 佑亮 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 哲学 / ドイツ観念論 / 知 / 主体性 / ヘーゲル / 人格性 / 本質 |
Research Abstract |
本年度は、第一にヘーゲルの論理学を中心に、個と普遍の関係を人格性の考えを基に研究を行った。ヘーゲルの主著『大論理学』の関連箇所を中心に、それ以前のイエーナ期の講義草稿等も参照しつつ、形而上学で自己の問題が占める重要性を、近代哲学の問題設定を踏まえつつ研究を進めた。これにより、古代ギリシア以来の、真の存在とは何かを問う形而上学の問題が、「汝自己自身を知れ」という古代ギリシアの言葉に象徴される自己認識の問題と密接に関わり、ヘーゲル自身が形而上学とも呼ぶその論理学の主要モチーフである概念がこうした事柄に解答を与える試みであるのが明らかにされた。以上の成果をまとめた論文を、日本ヘーゲル学会の公募論文として投稿し掲載が認められ、研究発表の欄の「ヘーゲル哲学研究」第18号の論文として公表した。また第二に、ヘーゲルが「映現すること」という独特の考えのもとに提示した本質と仮像の関係の問題について、本質の知としての側面を手掛りに新たな視座を提示する研究を行った。この「映現すること」が重点的に論じられる『大論理学』を中心に、その前後の時期を追い、更にアリストテレスの形而上学、中世の本質と現実存在の区別や、スピノザの実体の考えも踏まえて、ヘーゲルの哲学的関心に一貫する、真の存在としての哲学知の在り方を解明する作業を行った。それにより、従来哲学史で考えられたように、本質と仮像は互いに異質なのではなく、自らが自らにとって明らかになるという同じ一つの事、即ち自己知に帰着する事が明らかにされた。その成果を昨年12月に横浜の日本ヘーゲル学会研究大会で口頭発表を行い、大方の好評を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
個・特殊・普遍の関係の問題についての研究を、当初予定していたように、『大論理学』のみならず、ヘーゲルの思索の初期から後付けすることができたと共に、掲載が困難とされる日本ヘーゲル学会の公募論文として公表することができたため。また、ヘーゲル哲学における「映現すること」についての研究を同学会の口頭発表として発表を行ったのみならず、その公募論文として投稿するよう同階の複数の研究者から進められ、現在投稿に向けての準備が次第に整いつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上に挙げた研究を日本ヘーゲル学会の研究雑誌の公募論文として掲載を目指すことが第一に急務となる。そのために、ヘーゲル自身の錯綜し、重層的に絡み合う問題の諸相を解きほぐすために、アリストテレスの形而上学におけるウーシアの問題や、中世的なエッセンティアとしての本質の近代哲学における継承の仕方についての解明の作業や、スピノザにおいて実体とその属性としての精神の関係についてヘーゲルの受容の仕方がどのようなものであったのかについて詳しく究明していく必要がある。それによって報告者の研究が、単にヘーゲル哲学、あるいはドイツ観念論の枠内にとどまらず、哲学の根本問題として現代もなお有効で、問われなければならない問題として提示することが可能となるような視座を獲得することができるだろう。
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Research Products
(3 results)