2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘーゲルにおける知の主体性の本質についての研究 ―固有なものへの問い―
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12J07343
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
嶺岸 佑亮 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 哲学 / ドイツ観念論 / ヘーゲル / 主体性 / 知 / 精神 |
Research Abstract |
本年度は、ヘーゲルの論理学における「映現すること」の意義の解明に関する研究を行った。ヘーゲルの主著である『大論理学』における実体概念と主体概念との関係が、「映現すること」における本質と仮象との緊張関係に密接に関連することを解明した。その問題は、スピノザ的な唯一実体の考えと、この実体によって生じる現実的なものとの主従関係の枠組みを超えて、実体自身に固有の動性を認める方向性を示していることが明らかとなった。また、この動性の目的は、実体自身とは別の何かではなく、実体がまさしく自ら自身として自ら自身にとって存在するということに他ならない、ということが研究の結果判明した。また、こうした問題は、1812年から16年にかけて公刊されたヘーゲルの主著の一つである『大論理学』へと至るまでのヘーゲルの哲学的思索の形成に対して主要な原動力の一つをなしているということが、研究の進展によって明らかとなったのであった。そのため、このようなヘーゲルの思索の発展の経緯を明確化する必要が生じてくる結果となった。そのことを受けて、『大論理学』以前の時期、とりわけ1801年から7年にかけてのいわゆるイエーナ期の諸テクスト(1801年の『差異論文』、1802年の『信仰と知』、1804/5年の『体系構想II』の『形而上学』、1805/6年の『体系構想III』の『精神哲学』及び1807年の『精神現象学』の序文)における「主体的な実体」、或いは「同時に主体でもある実体」の考えの成立を追うことで、「映現すること」が単に無的な仮象といったものに過ぎないのではなく、実体そのものに固有な契機をなすことを示し、その次第を「ヘーゲル哲学における主体性と精神の自己知について」という題の論文にまとめ、2014年3月に東北大学文学会発行の『文化』第77号に掲載されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(1 results)