2013 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的多様性の低下したツキノワグマ地域個体群で確認された骨異常に関する研究
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12J07352
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中村 幸子 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012 – 2014-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / 骨形態異常 / 炎症 / 骨格成長 / 生存率 |
Research Abstract |
本研究の目的は、兵庫県に生息し遺伝的多様性が低下しているツキノワグマ地域個体群で確認された骨異常の形態的・組織的特徴分析と原因解明および、この個体群の健全性評価である。研究2年目である平成25年度は、骨病変部の顕微鏡観察による病理組織的特徴の明確化と骨格の成長評価および個体群生存率の検討を重点的に行った。 骨および上皮小体の肉眼観察と顕微鏡観察により、病変部の病理組織学的特徴を分析した。上皮小体に関しては、特徴的な病変像は確認されなかったことから、この骨形態異常は内分泌系異常に起因する可能性は低いと推察された。骨の形態異常が確認された周囲の関節では、著しい関節軟骨の消失が確認されたが、骨断面の肉眼観察においては海面骨等における内部構造の変異は確認されず、また顕微鏡観察でも消失軟骨下の緻密骨や骨梁において、壊死や骨嚢胞などの像は確認されなかった。従って骨の形態異常は軟骨消失による物理的刺激の増加に起因する可能性はないと考えられた。骨形態異常周辺部の顕微鏡観察により、骨内外において好中球、線維性細胞の浸潤および血管新生が特徴的な炎症像が確認された。炎症の中心付近には骨片が確認される個体もあり、炎症による骨の破壊が一部生じていたことが推察された。また炎症周囲の骨梁においては、骨芽細胞が多数確認され、個体によっては破骨細胞の著しい増加も確認された。従って、炎症と破骨細胞による骨の壊死と破壊、それを補う骨の新生が起こっており、これが骨の形態異常発生につながっている可能性が推察された。個体群の健全性評価としては、骨格の成長と個体群の生存率について分析した。骨格の成長に関しては、兵庫県内生息の2群間で体格や成長速度に差はあるが大きなものではなく、骨格の成長に関しては健全であると考えられた。生存率分析に関しては、堅果類の豊凶の影響を受けるが、本個体群は本来高い生存率をもつことが示された。また、昨年度重点的に分析にを行った、ツキノワグマの骨の基本数および形態に関する内容は、学術雑誌へ投稿し受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に行った、肉眼観察によるツキノワグマの骨の形状と数の基礎情報については分析を終了し、投稿論文として受理された。また、骨の病変部における顕微鏡観察による特徴については、観察がほぼ終了し、大きな特徴をつかむことができた。健全性評価に関しては骨格の成長に関しての分析と個体群の生存率の分析を行い、生存率に関しては結果を学会で発表した。以上の通り、本年度に計画していた研究内容は、ほぼ計画通りに遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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