2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07358
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 翔太 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 単結晶X線構造解析 / 細孔性錯体 / 微量分析 |
Research Abstract |
本年度は試料を結晶化することなく、単結晶細孔性錯体に包接するだけでX線構造解析する画期的な手法を開発した。 単結晶X線構造解析は化合物の構造決定において最も強力な手法である反面、試料の単結晶が得られなければ測定すらできないという本質的な課題があった。しかし結晶スポンジと呼ばれる単結晶性の細孔性錯体に痕跡量の試料を含む溶液に浸すだけで、試料の結晶化の過程を経ることなくX線構造を得る手法を確立した。 トリス(4-ピリジル)トリアジンとZnI2からなる細孔性錯体[(ZnI2)3(TPT)2]nの結晶1個(50脚角)を50ngのグアイアズレン(1)を含む溶液に浸漬させ、溶媒をゆっくりと揮発させるとゲスト包接錯体結晶が得られた。この結晶をX線結晶構造解析したところ、細孔内にゲスト(1)の構造を50%の占有率でディスオーダーすることなく観測できた(図1)。本手法は、100pm角の錯体結晶と5μgのゲストを用いることで一般化でき、汎用の単結晶X線回折装置を用いても光学活性なゲストや複雑な天然物など多数のゲスト分子が再現性良く決定できた。このような光学活性な化合物は、これまで誘導体化などの煩雑な化学変換が必要であったが本手法であれば、結晶スポンジを試料に浸すだけで包接・X線構造解析できるようになった。 本研究成果はこれまでの単結晶X線構造解析の常識を変える可能性をもっており、製薬、天然物化学、食品分析、香料、科学捜査など後半に渡る応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は試料を結晶化することなく、単結晶細孔性錯体に包接するだけでX線構造解析する画期的な手法を開発した。これはこれまでの単結晶X線構造解析の常識を打ち破る画期的な成果であり、当初の予想を上回る結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果によって有機溶媒中で分子量500程度までの化合物を包接できるようになった。そこで本手法を用いて、不安定化合物や、これまでの手法ではX線構造解析できなかった化合物の構造解析を行っていく。また、細孔性錯体の細孔内に入らない大きな化合物や、水溶性化合物の包接、X線構造解析を行うための新規細孔性錯体の設計・合成を行っていく。
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Research Products
(3 results)