2012 Fiscal Year Annual Research Report
マスト細胞サブセットの提唱とサブセット特異的な免疫疾患治療方策
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12J07362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
網谷 岳朗 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マスト細胞 / S1P2 / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
免疫担当細胞の一つであるマスト細胞は全身組織に広く分布する細胞で、炎症やアレルギーといった生体に悪影響を及ぼす疾患のみならず、寄生虫感染や敗血症においては生体防御に働くといった二面性を持った細胞である。 マスト細胞には古くから粘膜型マスト細胞と結合組織型マスト細胞の二種類が存在すると考えられており、この分類はマスト細胞の産生するマスト細胞プロテアーゼの違いにより規定されてきたが、現在では同じプロテアーゼの産生を行なっているにも関わらず他に発現する分子が異なるなど、既存の分類には当てはまらない細胞が存在することが知られており、マスト細胞は組織ごとに異なるサブセットを有しているのではないか、ということも示唆されている。 私は以上のことから、組織ごとに異なるマスト細胞サブセットが疾患の発症において異なった作用を示しているのではないかと考え、マスト細胞サブセットの提唱とサブセット特異的な免疫疾患治療方策という課題を遂行してきた。 私は、本年度に研究課題を遂行するにあたり、マスト細胞において重要な役割を果たす分子と、そのマスト細胞関連疾患に関する探索を行なってきた。その一つが本年度に当研究室で報告した、マスト細胞上の核酸受容体の炎症性腸疾患への関与である。また、当研究室では以前に食物アレルギーモデルマウスにおいて、スフィンゴシン-1リン酸受容体SIP1,3,4の阻害剤であるFTY720を投与することでマスト細胞の遊走が抑制され、食物アレルギーが改善することを見出している。このFTY720は炎症性腸疾患マウスに投与することで炎症性腸疾患の病態が改善することが報告されている。しかし、マスト細胞上に発現するスフィンゴシン-1-リン酸受容体の一つである、SIP2の炎症性腸管疾患での機能は報告されていない。以上のことから、マスト細胞が重要な役割を果たす炎症性腸疾患でのSIP2の役割を調べるため、SIP2欠損マウスにおいて炎症性腸疾患を誘導した。 野生型マウスとSIP2欠損マウスにデキストラン硫酸ナトリウムによる炎症性腸疾患モデルを誘導したところ、SIP2欠損マウスにおいて、野生型マウスと比較して激しい体重の減少が観察された。このとき、野生型の腸管では見られない組織の炎症像、マスト細胞の活性化、好中球の浸潤がSIP2欠損マウスでは観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SIP2欠損による炎症性腸疾患への悪影響を見出しており、その根拠となる細胞やサイトカインの変動傾向をこれまでに明らかにしている。現在その検証と検体数の増加を行なっている段階である。これまでに、SIP受容体を阻害するFTY720が炎症性腸疾患治療に有用であるという報告がされてきたが、今回の結果から、より選択性の高いSIP受容体阻害薬が炎症性腸疾患治療に重要であることを示し、新たなマスト細胞関連腸管免疫疾患治療法につなげる事が可能になると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前項でも述べたように、現在、SIP2欠損による悪影響の中心となる細胞とサイトカインを明らかにしつつあり、この結果を補強する実験を行なっている。今後は、その細胞、及びサイトカインの存在や機能が炎症性腸疾患の増悪化に繋がっていることを逆に示していくことで、論文として発表できる形に繋げていこうと考えている。また、我々はこれまでに炎症性腸疾患の責任細胞がマスト細胞であることを示しているが、マスト細胞が他の細胞にどういった影響を与え、炎症性腸疾患を引き起こしているかは明らかにしていない。今回の研究から、マスト細胞と現在影響を見出しつつある細胞との関連を明らかにすることも試みていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)