2013 Fiscal Year Annual Research Report
中世内海地域における歴史空間論の構築-環有明海地域を素材として-
Project/Area Number |
12J07388
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
貴田 潔 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員PD
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Keywords | 中世寺院 / 海辺寺院 / 環有明海経済圏 / 水上交通 / 菊池川流域 / 山野の利用 / 草原の野焼き / オーラル・ヒストリー |
Research Abstract |
当初の計画からの大きな変更点として、地元の方々の理解と協力を不可欠とする現地調査の連続性を重視したため、前年度から行ってきた佐賀県域・福岡県域の調査を休止せず、当該年度も継続した。 先ず、佐賀県域では、肥前国藤津荘故地の竹崎島(現佐賀県太良町)における調査の成果として、論文「環有明海地域における海辺寺院の存立―肥前国藤津荘故地にみる竹崎島と観世音寺の関係から―」の採用が決定された。次年度、『民衆史研究』87に掲載される予定である。中世・近世史料を含む平井坊文書(東京大学史料編纂所所蔵謄写本)の読解と現代における聞き書きの成果を複合的に組み合わせることで、竹崎島とその中心に位置する観世音寺の歴史を立体的に復原することができた。 次に、福岡県域の成果として、『筑後国水田荘故地調査報告書 史料編』を刊行できた。やはり前年度から継続してきた筑後国水田荘故地(現福岡県筑後市)の調査に関するものであり、主に故地に残る近世・近代史料の目録と翻刻を収録した。旧久留米藩領の庄屋文書である城崎文書、近代の郷土史資料を中心とした近本文書・近本甲五郎文書、地域の灌漑体系と水利慣行に関する花宗用水組合所蔵文書など諸史料群を紹介した。なお、続く次年度にも『筑後国水田荘故地調査報告書 地誌編』(仮名)の刊行を予定している。 最後に、熊本県域については、肥後国玉名荘故地に位置する広福寺(現熊本県玉名市)の周辺地域を踏査した。当該地域は大きな圃場整備が未だに実施されておらず、旧来の景観を良好な状態に残す。但し、九州新幹線のためのトンネルの貫通に伴い、小岱山付近の小河川の水量が減少したという聞き書きを得た。また、現地を歩くなかで、用水・排水の在り方を地図に記録した。 さらに、平成26年(2014)3月に熊本県菊池市で開かれた菊池武光シンポジウムでは、菊池川流域と有明海を繋ぐ中世の水上交通や、草原の野焼きなど山野の利用について論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『筑後国水田荘故地調査報告書 史料編』を刊行したほか、竹崎島に関する査読論文の採用(次年度掲載)が決定された。これらは当初の計画よりも早く達成できた。さらに、次年度に刊行を予定する『筑後国水田荘故地調査報告書 地誌編』(仮名)の編集も順調に進む。但し、当初の計画で当該年度のフィールドとしていた熊本県域・長崎県域の調査がやや遅れており、最終的な調整期間である次年度に補充の追加調査を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通り、最終年度である次年度は、佐賀県域・福岡県域・熊本県域・長崎県域の全体において補充調査を行う期間としたい。特に、当該年度までの研究状況として、熊本県域・長崎県域の調査にやや遅れが見られるため、これらの地域の補充調査に重点を置きたい。 また、研究成果の発表の面では、次年度における『筑後国水田荘故地調査報告書 地誌編』(仮名)の刊行を目指す。
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Research Products
(3 results)