2013 Fiscal Year Annual Research Report
トラフグ脂質代謝制御因子としての成長ホルモンの機能解析
Project/Area Number |
12J07423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 雪 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Takifugu rubripes / 脂質代謝 / 成長ホルモン |
Research Abstract |
魚類では主要な脂質蓄積部位が魚種ごとに異なっており、トラフグのように主に肝臓に脂質を蓄積する魚種と、マダイのように主に筋肉と肝臓の両組織に脂質を蓄積する魚種に大別される。脊椎動物では、成長ホルモン(GH)がこれらの組織における脂質の放出や取り込みを制御することが知られているが、魚類脂質代謝におけるGHの影響は未解明である。本研究では、肝臓特異的に脂質を蓄積するトラフグを対象に、GHがその脂質代謝に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、本年度はトラフグの組織切片を用いて組換えトラフグGHに応答して発現変動を示す遺伝子を詳細に解析した。 トラフグTakifugu rubripesの筋肉と肝臓を摘出し、厚さ1mm、直径8mmの組織切片を作成して、L15培地中、20℃で24時間培養した。その後、終濃度が5ng/mLとなるように組換えトラフグGHを投与して1時間、12時間および24時間培養した。切片から全RNAを抽出し、逆転写酵素によって合成したcDNAを用いてリアルタイムPCRにより定量的に遺伝子の発現量を調べた。その結果、筋肉では1時間後にグリコゲンリン酸化酵素(PYGM)および12時間後に脂肪酸合成酵素(FAS)のmRNA発現量が減少する傾向にあり、肝臓では1時間後にリポタンパク質リパーゼ(LPL)および12時間後にFASのmRNA発現量が減少し、24時間後にカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPTla)のmRNA発現量が増加する傾向にあることを示した。また、同様の組織培養系を用いて、哺乳類においてGHシグナル伝達を介することが知られている分子であるSTAT、AktおよびErkについて、GHに応答した活性型の存在量の変化をウエスタンブロットによって調べた。その結果、AktおよびErkの活性化がGH刺激後1時間以内に確認され、トラフグにおいても哺乳類と同様の分子を介してGHシグナルが伝達されている可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、トラフグ筋肉および肝臓においてGH処理によって発現変動を示す遺伝子群の詳細な経時的変動を、リアルタイムPCRを用いて解析した。また、GHシグナル伝達分子についてもウエスタンブロットによる解析を行い、GH処理によって活性化する分子を同定し、GHがトラフグ組織に及ぼす影響について明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、魚類の筋肉に存在する幹細胞である筋衛星細胞の分化能の違いが、魚種特異的な脂質蓄積機構に関与している可能性が示された。そのため、今後は筋衛星細胞の単離および培養などの実験系を確立し、その性質について解析していく予定である。これについては、哺乳類において当該実験系を確立しており、多くの実績を残しているミネソタ大学幹細胞研究所に出向し、実験手法を習得して魚類に応用する予定である。
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Research Products
(3 results)