2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07448
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
曾和 由記子 日本女子大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 平安中期私家集 / 配列方法 / 表現 / 中務集 / 信明集 / 清正集 |
Research Abstract |
本研究の目的は、平安中期私家集の表現と配列方法の変遷と、それによる作品内世界構築の実態を明らかにすることである。24年度は『中務集』『信明集』『清正集』を調査対象として研究を進めた。『中務集』は一類本諸本と近年公開された資経本を中心に比較を行った。表現では、資経本は他本に比べて古い本文を残し得る可能性を見出した。配列では、資経本は特に中務の娘や娘婿、孫たちなど、家族間で交わされた贈答などを特有歌として持つ。親族の歌を残そうとする編纂方法は近親者の歌を集めた同様の家集への影響なども含め注目できるものである。 『信明集』では、一類本から三類本の伝本5本を比較した。表現は一類本の北村家蔵本や資経本の本文が古態を残している箇所が見られる。また、一類本を改編して出来た三類本も古態が残る箇所があり注目される。配列は、一類本では中務という特定の人物を取り上げて42首という大きな歌群でその恋愛事情を語っていく構成が見られた。これは物語性を意図した独自の配列である。また、三類本では、一類本の歌の配列を改編してさらに物語的な家集を形作っている。より複雑な家集編纂方法の発達の一旦として重要視すべきものである。 『清正集』は一類本から三類本の伝本3本を比較し、投稿を受理された論文「『清正集』試論一表現と配列から-」において、表現については一類本の詞書の中で示されていた具体的な場所や詠者の感情を表す表現が、二類本と三類本では簡略化や脱落している傾向があることを明らかにした。また配列については、一類本は勅撰集的配列という大枠の中で、季節歌ごとに時間の推移による配列や、冒頭歌と末尾歌の対応関係、歌語や景物、贈答相手によって小グループが形成された精緻な配列が見られることを確認した。他撰といわれている一類本が自撰の形を留めていることを明らかにした点で意義があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とした家集について、,各諸本の本文と配列を比較して調査分析を行い、調査結果が出た家集については論文にして公表している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、調査をさらに進めている『信明集』『中務集』について、その成果を論文もしくは学会発表にて報告することと、今年度の研究対象である『忠見集』『馬内侍集』についての調査を進め、成果を公表する。
|
Research Products
(1 results)