2012 Fiscal Year Annual Research Report
エックハルト及びドイツ神秘思想の在俗信徒・民衆の霊性に対する影響関係の解明
Project/Area Number |
12J07507
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
阿部 善彦 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | キリスト教神秘思想 / ドイツ神秘思想 / エックハルト / 近世の霊性 / 一般民衆の宗教霊性 / デヴォチオ・モデルナ / フランドル神秘思想 / 神の友運動 |
Research Abstract |
本研究は、在俗信徒・民衆の霊性に対するエックハルト及びドイツ神秘思想の影響関係を解明する。本年度は、国内に資料が特に乏しい、中世後期一近世のキリスト教神秘思想(主にドイツ神秘思想と関係の深いフランドル神秘思想とデヴォチオ・モデルナ)と同時期の一般民衆の宗教霊性に関する資料・文献の調査を集中的に行うこととし、8-9月、2-3月に海外出張を計画し、資料と研究者が特に充実しているルーヴェン大学、トリアー大学神学部クザーヌス研究所を主なる研究機関に選定し現地調査を実施した。ルーヴェンではフランドル神秘思想の専門家Rob Faesen教授の助言を得て研究調査を進めるとともに、フランドル神秘思想の成立背景となった女性神秘思想、修道院神学、12世紀のオリゲネス・ルネサンスに関して、P. Verdeyen教授に質疑を行い貴重な研究情報を得ることができた。こうした集中的な現地調査を通じて、中世後期-近世の神秘思想の展開(ドイツ神秘思想からフランドル神秘思想、デヴォチオ・モデルナに至る)について一定の展望と研究状況の知見を確保できた。また、同時期に豊かな展開を見せた在俗信徒・民衆の霊性を主題化するためには、同時期の哲学・神学・霊性的著作のテキスト研究だけでなく、テキスト・写本伝承状況の研究、ライン河及びベルギー・オランダ地域の宗教運動の状況(修道院、宗教共同体、聖母崇敬、巡礼等)の把握が不可欠であり、また、祭壇画、祈祷画等の宗教芸術に表された敬虔な信仰心と思想背景の解明-特にフランドル宗教芸術と神秘思想の関係の解明一も重要となり、この点については、トリアーでMarco Broesch研究員(クザーヌス研究所)とH. Schwaetzer教授(同研究所前所長)からも最新の研究状況と資料に関する情報を得た。研究成果は複数の学会発表・論文で公開され、そのほか準備中のものがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外での現地調査を通じて、新しい研究文献・資料を収集しつつ、主要な専門家と面談して自分の研究計画や問題意識について質疑を行い、有益な研究情報、助言を得たことによって、当初の研究計画で念頭に置いていた以上に、具体的で有効な研究方法・研究計画を確立することができた。また、海外の現地調査における研究者との面談を通じて、未だ研究の蓄積の少ない問題領域を主題化する本研究計画が、現在のキリスト教思想史の研究において非常に魅力的で、重要な意味があると評価を得ることもでき、今後の研究における交流・協力関係を築くこともできた。また研究成果を学会発表、論文を通じて複数の機会に公表し、また、今後も公表の準備ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の現地調査等で収集した研究資料を整理するとともに、引き続き、本研究課題にとって重要なテキスト(哲学・神学・霊性的著作)の思想内容の解読を進める。それによって、ドイツ神秘思想を受容したフランドル神秘思想、デヴォチオ・モデルナの思想的展開と、同時期の一般民衆の霊性の状況の解明を行うとともに、それに必要な研究資料及び研究知見を確保するため、海外における現地調査を継続して実施する。次年度は、特に、本課題に関連して研究上の重要性が認められる、フランドル宗教芸術を視野に入れた研究を行うために、H.Schwaetzer教授から紹介を受けた専門家Inigo Bocken教授(ナイメーヘン大学)の下で集中した研究調査を実施する予定である。また、国際学会に参加し研究発表を行うとともに研究交流を推進する(すでに複数の学会を具体的に検討中).
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Research Products
(9 results)