2012 Fiscal Year Annual Research Report
異学の禁と漢詩-天明・寛政期の日本における漢詩の位置づけ
Project/Area Number |
12J07547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 嘉孝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 漢詩文 / 異学の禁 / 経世済民 / 挿花 / 囲碁 / 山本北山 / 樫田北岸 / 秦滄浪 |
Research Abstract |
平成24年度の研究成果は、(ア)修士論文で得られた山本北山関連研究成果の整理と発表、(イ)江戸時代中・後期における諸芸のあり方に関する具体的な研究、に二分できる。 (ア)では、修士論文の一部として行った山本北山の諸芸論研究を精錬し、(1)儒者と諸芸指導書、及び経世済民と技芸の関係、(2)〈男性らしい〉芸道としての挿花、という二つの視角から口頭発表・論文執筆を行った。(1)については日本近世文学会の全国大会にて口頭発表を行い、同学会誌への論文投稿を予定している。(2)については、東京大学比較文学比較文化研究室発行の英文論文集に論稿を投稿済みである。少なくとも山本北山の視点から見れば、天明・寛政年間の詩風転換が経世済民(特に教化)と不可分であることを確証した。 (イ)では、(ア)(1)の延長線上として、秦滄浪が棋譜に寄せた漢文の序文を取り上げ、対琉球の外交手段としての囲碁のあり方を追究し、米国のアジア研究学会全国大会にて口頭発表を行った。囲碁が広く一般に行われる娯楽でありながら、実際的な外交手段としても機能しており、且つそれに一儒者が注目していたことを確認できた意義は大きかった。 以上の研究を通して、寛政異学の禁と漢詩の関係を推し測るためには、まず同時代の広範囲な学芸奨励、中でも儒者による諸芸(儒学・漢詩文・武術・挿花・書・囲碁・医学・卜占など)の奨励のあり方の解明が必須であることを強く認識した。結果、寛政異学の禁に関与した人物の詩論に焦点を当てる研究は、より広範囲な学問・芸術の奨励の研究の一端として位置づけられる必要があることが判明した。それ故、異学の禁関係者の個別研究から全体像の描出、との展開が予想されていた当初の年次計画は、全体像の把握から個別研究へ、という手順へと反転させられるべきであり、平成24年度は3年次の計画として提示していた全体的な枠組みの研究を行ったことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天明~文化年間における漢詩をめぐる言論を、同時代の儒者・漢学者たちによる教化と諸芸奨励の文脈上に位置づけることができた。また、研究成果を日米の全国学会発表などの場で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、寛政異学の禁が、同時代の儒者・漢学者たちによる教化と漢詩を含めた諸芸奨励の文脈上にてどのような位置を占めるのかを解明する必要がある。研究計画通り、異学の禁に関与した人物の個別研究を進めていく予定でおり、異学の禁推進派からは西山拙斎と頼春水、異学の禁反対派からは山本北山と大田錦城に焦点を絞ることにする。また、異学の禁以前の幕府における朱子学の様相を明らかにするために、中村蘭林の著述も研究対象とする計画でいる。
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Research Products
(4 results)