2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリア活性化制御機構におけるプログラニュリンの役割に関する研究
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12J07548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 良法 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プログラニュリン / ミクログリア / 外傷性脳傷害 / TGFβ1 / リソソーム / mTORC1 |
Research Abstract |
マウスを用いた実験的外傷性脳傷害モデルによりミクログリアの活性化におけるプログラニュリン(PGRN)の役割を大脳皮質において解析した。まず、野生型(WT)マウスを用いた解析により、PGRNは傷害後産生増加し、CD68陽性の活性化ミクログリアを主要な産生源とすることを明らかにした。次にWTマウスとプログラニュリン遺伝子欠損(KO)マウスを用いた解析から、KOマウスではCD68の発現量、酸化ストレスの指標となるカルボニル化タンパク質の蓄積や血管新生の指標となるラミニンの免疫反応性が亢進していた。さらに、KOマウスではCD68陽性のミクログリアを産生源とするTGFβ1の発現が亢進し、その細胞内情報伝達を仲介するSmad3のリン酸化がアストロサイトにおいて亢進していた。CD68はリソソーム関連タンパク質であることから、Lamplを始めとするリソソーム関連タンパク質の発現解析を行ったところ、これらの発現はKOマウスの活性化ミクログリアで上昇していた。加えて、リソソームの発現を調節する転写因子TFEBが核移行した活性化ミクログリアはKOマウスにおいて増加し、逆に、その抑制的な制御を担うmTORC1の活性はKOマウスにおいて低下していた。さらに、PGRNはプロモーター領域にTFEB結合領域をもつこと、Lamp1と共局在することを明らかにした。また、神経細胞の損傷はKOマウスにおいて増加し、その機序へのリソソーム関連タンパク質の関与が示唆された。本研究によって、PGRNはリソソーム生合成やTGFβ1シグナルの制御を介して炎症反応を抑制し、神経保護作用を発揮していることが明らかとなった。PGRNのもつこのような神経保護作用は神経変性疾患を抑制する1つの機序となっていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は活性化ミクログリアのマーカーであるCD68、TGFβ1がプログラニュリン(PGRN)の欠如によって脳傷害後に発現増加することに着目して開始した実験である。現在までの研究によって、ミクログリアにおけるCD68の産生増加は、PGRNの欠如がmTORC1の活性低下を誘起することで、傷害後のリソソーム生合成が増加した結果に起因することを明らかにしている。また、TGFβ1についてもアストロサイトにおいて細胞内情報伝達が促進し、アストログリオーシスの制御に関係していることを示しており、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究によって、プログラニュリン(PGRN)の欠如はmTORC1の活性低下を誘起し、TFEBの核移行を促進することで傷害後のミクログリアにおけるリソソーム関連タンパク質の生合成を促進することを示唆している。加えて、PGRNはプロモーター領域にTFEBの結合配列をもつこと、リソソームタンパク質であるLamp1と共局在することから、PGRNはリソソーム関連タンパク質産生時に産生された後、リソソームに局在するmTORC1を活性化を介して、リソソーム関連タンパク質の産生に抑制的に働く(リソソーム生合成における負のフィードバック)可能性がある。この仮説を証明するために、ミクログリアの初代培養系を確立し、ミクログリアの活性化時にPGRNを添加するなどして、PGRNのmTORC1の活性化への役割を明らかにしていく。また、老齢マウスを用いて、上記の機構と加齢との関係を解明する。
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Research Products
(6 results)