2012 Fiscal Year Annual Research Report
アノード生体界面電子移動活性化分子の同定及びその遺伝子発現誘導機構に関する研究
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12J07550
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
岡本 章玄 東京薬科大学, 生命科学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 鉄還元細菌 / シグナル分子 / 構造決定 / 好アルカリ性細菌 / 細胞外電子移動 / フラビン分子 / シトクロム |
Research Abstract |
本研究課題では、申請者が発見した電流生成微生物Shewanellaにおけるシグナル分子を介した(2)シグナル分子による代謝活性化現象の極限微生物における普遍性検討を目的として研究を行った。(1)微生物のバイオフィルムから高濃度にシグナル分子を取りだす条件検討を進め、高濃度に濃縮する条件を見出した。これは、シグナル分子の単離、構造決定を行う上で最も重要な前処理であり、今後、シグナル分子構造決定、代謝活性化機(2)本課題で見出しているシグナル分子による微生物の代謝活性化機構の普遍性を検討する為に、まず極限環境において電流生成能を持つ微生物の探索を行った。具体的には、サンフランシスコ北部に位置するpH12の高アルカリ性サイトでOn-site電気化学システムを構築し、電極への電子移動能を有する微生物をエンリッチ、実験室において様々培養条件を検討した結果、電流生成菌の単離に成功した。この菌は、高アルカリ条件下で細胞外電子移動過程を行う初めての菌であり、本課題の目的に加えて、その生態やエネルギー獲得メカニズムは既に多くの研究者からの注目を集めている。今後は、シグナル分子による代謝活性化機構の有無を確認すると共に、この極限細菌の電子移動過程に関しても詳しく調べて行く予定である。 以上の成果に加えて、課題研究を遂行する中で電流生成菌Shewanellaの電子移動機構に関して、当初の研究計画には無かった思いがけない重要な発見があった。Shewanellaは細胞膜表面のシトクロムを用いて電子移動を行い、その電子移動速度はフラビン小分子によって加速されることが知られていた。そして、その電子移動が加速するしくみは、溶解フラビン分子の自由拡散過程によるというのが該当分野の長年にわたる定説であったが、本研究ではシトクロム内特定部位にフラビン小分子が結合することで電子移動速度が大幅に加速されるということを初めて明らかにした。この成果は高く評価され、Proceedingsof National Aeademv of Seienees USA誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度計画で期待したシグナル分子の構造決定までは達成出来ていないものの、(1)極限条件下で細胞外電子移動を行う菌の発見や、(2)細胞外電子移動機構の分子レベルでの解明は、研究課題の当初の予想を超えた大きな研究成果であり、その科学的重要性は該当分野において計り知れず、今後物理、化学、分子生物学を巻き込む重要研究課題に発展することが期待出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
シグナル分子の構造決定、またシグナル分子が関わる遺伝子発現機構に関しては、従来計画していた通りに行う。 つまり、シグナル分子の単離後、分光や質量分析法を適用し、分子構造の決定を行う。その後、シグナル分子がどう遺伝子発現に影響を与えるのかを詳細に検討する。また、(1)極限条件下で細胞外電子移動を行う菌の発見や、(2)細胞外電子移動機構の分子レベルでの解明は今後も研究を続けるべき非常に重要な研究課題である。(1)に関しては、遺伝子解読を行い、どのような電子伝達系を有するかを検討する。また、(2)似関しては、膜タンパク質が小分子フラビンと相互作用する機構をより生化学的な観点から詳細に調べる予定である。
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Research Products
(3 results)