2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07561
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 光紀 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | トーリックイデアル / A-超幾何系 / ホロノミック勾配法 / 輸送多面体 / マルコフ複雑度 |
Research Abstract |
第2年度の前半では, 統計的ランキングモデルの一つであるBirkhoffモデルに付随するトーリックイデアルに関して, 山口天氏, 竹村彰通教授との共同研究の成果である3次生成の証明について, 証明の細部を精緻化した上で論文を執筆し, 採録決定となった. また, 新たにA-超幾何系の統計学への応用について研究を開始し, A-超幾何系がトーリックモデルを基礎とする統計モデルの条件付き最尤推定に対して重要な役割をもつことを発見した. 具体的には, 条件付き最尤推定の際に問題となる規格化定数の計算を, A-超幾何系を利用したホロノミック勾配法の枠組みで定式化した. 特に, Aomoto--Gei'fand系に対応する場合について, 青本・喜多によるジェネリックな点でのPfaff系が利用できることを確認した. 提案手法の適用には, Pfaff系の特異点およびその近傍における数値計算が問題となるが, 本研究ではすべてのパラメータを変数として含む特異点上の関係式を導出した. さらに, 高山信毅教授との議論により, Aomoto--Gel'fand系の微分Pfaff系と差分Pfaff系の具体的な対応についても結果が得られた. 一方で, Birkhoffモデルに付随するトーリックイデアルの結果の拡張として, 輸送多面体に付随するトーリックイデアルについても研究を行った. まず, Birkhoffモデルの場合と同様に, 3次生成であることの初等的証明を与えた. 輸送多面体に付随する配置行列が完全二部グラフの接続行列に対するファイバーであることに着目し, ファイバーに生起する配置行列のトーリックイデアルに関する研究を古山貴之氏との共同研究の形式で開始した. ファイバーに生起する配置行列のマルコフ次元の最大値が, マルコフ複雑度によって上からおさえられることを示した. さらに, いくつかの具体例を通じて, マルコフ次元の最大値とマルコフ複雑度が一致する場合と乖離する場合の両方が存在することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Birkhoffモデルに関する論文が採録決定となっており, オンラインでは既に公開されている. 新たに着手したホロノミック勾配法の研究では, 超幾何関数論で重要なA-超幾何系が統計学で現実的な問題設定とホロノミック勾配法の枠組みを通して密接に関係していることが判明し, Aomoto--Gel'fand系のPfaff系の特異点への対処について理論的結果も得られている. また, Brikhoffモデルの結果の拡張として, 輸送多面体に関する成果が得られている. 関連する一般論として, 古山貴之氏との共同研究によるファイバーに生起する配置行列の研究も進んでいる. 以上の状況から, おおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
A-超幾何系を利用したホロノミック勾配法の条件付き最尤推定に関しては, 提案手法を実装した上で実データに適用することが最重要課題である. 現状得られている特異点上の関係式は, 大きなサイズの分割表の任意の特異性に対処するには不十分であるため, 数値計算上のさらなる工夫が必要である. また, Veronese配置に付随するA-超幾何系は, 統計学におけるHardy--Weinbergモデルに対応するA-超幾何系を特殊ケースとして含むため, Aomoto--Gel'fand系に続く研究対象として有力な候補の一つである. 今後, これらの課題について並行して取り組んでいく予定である. トーリックイデアルのマルコフ基底に関する研究課題では, 無三因子交互作用のマルコフ次元の下界の改良と, その手続きのアルゴリズムとしての定式化を行う予定である.
|
Research Products
(9 results)