2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体触覚センサの神経生理学的な外界刺激受容特性に基づいた新規触覚センサの開発
Project/Area Number |
12J07585
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲谷 正史 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科, 特別研究員(SPD)
|
Keywords | 触覚 / 触感 / 計測工学 / 皮膚感覚 / メルケル細胞 / 末梢神経 / 機械受容器 / 神経科学 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績状況は次の3つである。 1. メルケル細胞が持つ機械受容チャネルの同定と機能解析 コロンビア大学医療センター・皮膚科に滞在し、触覚機械受容器である表皮メルケル細胞の機械受容特性の研究に従事した。メルケル細胞の機械受容特性を明らかにすることで、生体を模倣した高精度な触覚センサの開発を促進することができる。 具体的には、パッチクランプ法を用いて、表皮から単離したメルケル細胞を数日培養し、直接触覚刺激を与えた際に得られる機械受容応答特性を記録した。研究の成果として、以下の点を明らかにした。(1)メルケル細胞は機械刺激に対して応答する(機械受容性電流の記録に成功) (2)メルケル細胞は、機械刺激の強度に比例して応答が変化する (3)保持電位によって機械受容性電流の向きが変わることから、機械受容チャネルは非選択性陽イオンチャネルとしての特性を持つ (4)メルケル細胞が発現している遺伝子を定量PCRによって解析した結果、機械受容チャネルとして知られているPiezoチャネルが発現している 2. 有限要素法を利用した指腹部変形解析に基づくヒト凹凸触知覚のモデル構築 これまでに開発していた指腹部の2次元有限要素モデルの評価を行った。また、人間の凹凸触知覚に関する心理実験の結果と組み合わせることで、指腹部の変形から凹凸を区別する計算アルゴリズムを考案し、その精度を評価した。 3. 触覚研究アウトリーチ活動の実施 工学における触覚研究の成果を、研究者でとどめることなく、世間一般にも広く知ってもらうために、一般向けの講演をニューヨーク市内にて2回、学会デモセッション公開を1件(ヒューストン市)、触覚の教科書(触覚認識メカニズムと応用技術-触覚センサ・触覚ディスプレイ)の分筆を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究題目を完遂するために必要なことは、触覚受容野を①調べる ②理解する ③造ることである。これまでに、メルケル細胞-神経複合体が担う触覚受容野の特性を調べることに成功し、その一部の結果は論文の形で英科学誌Natureに採択された。また、触覚受容野を理解するために、触覚センサ開発に必要な機械刺激受容の数理モデルの開発を行った。特に、皮膚変形の有限要素モデルを利用して触知覚特性との相関について検討を進めており、論文投稿準備中である。以上の理由から、当初掲げた研究計画は順調に進展していると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究課題推進は、研究目標である触覚センサ開発を重点的に行う。過去2年の研究により、表皮メルケル細胞が確かに生体触覚センサであることを示した。皮膚の有毛部において、触盤と呼ばれる表皮メルケル細胞が高密度に密集している部位があり、1本の求心性神経泰複数のメルケル細胞を支配していることが知られている。このようなメルケル細胞一神経複合体の構成、ならびに機械刺激に対する応答特性を参考にしながら、やさしく押された時に得られる圧力情報を長時間にわたって計測可能な触覚センサシステムを構築する。また、表皮メルケル細胞がもっ機械受容チャネルがどこに局在するのか、また末梢神経末端にどのようにして触感情報を伝えているのかについては、生物物理の観点からも興味深いだけでなく、工学的な触覚センサがどの程度の情報量を伝達するべきか設計する際に役立つ基礎知見である。本点についても同時並行にて研究を進める考えである。
|
Research Products
(11 results)