2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07609
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
國廣 俊太 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カドミウム / スクリーニング / OsDEP1 / ファイトレメディエーション / 酵母 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
本研究では、食品衛生法で定められたカドミウム(Cd)の基準値を下回る農作物作出技術確立や土壌から重金属を除去する技術であるファイトレメディエーション法の確立に向けて、イネからこれらの機能を持つ遺伝子を探索し、技術確立に貢献する。 イネのcDNAをCd感受性酵母Δycf1に導入し、Cd含有培地でスクリーニングを行った。イネはイタイイタイ病の事例からCd高濃度でも生育できたことから、Cd耐性に関わる遺伝子を多量に持つと考えた。スクリーニングの結果、OsDEP1遺伝子が見つかった。OsDEP1は、イネの穂の形態形成に関わる遺伝子である。シロイヌナズナでは、三量体Gタンパク質を構成するγサブユニットをコードする遺伝子と相同性を示す。 OsDEP1のアミノ酸1-169残基は、Gタンパク質を構成するβサブユニットと結合する領域とされており、システインはほとんど含まれない。そして、アミノ酸170-426残基はシステインが集中して存在していることにより、システインリッチ領域とされる。そこで、これらの特徴的なアミノ酸領域を持つことから、OsDEP1全長、OsDEP1(1-169)、OsDEP1(170-426)の3つの領域をΔycf1とシロイヌナズナのColumbia野生型(Col-0)に導入し、それぞれの領域がΔycf1とCol-0にCd耐性を与えるかをCd含有培地で培養することで確認した。OsDEP1全長とOsDEPI(170-426)を導入したAycf1とCo1-0はCd耐性を示し、OsDEP1(1-169)はCd感受性を示した。さらに、OsDEP1の3つの領域を導入したCol-0のCd含量を原子吸光光度計で測定した結果、OsDEP1全長とOsDEP1(170-426)を導入したCo1-0は、Cdを高蓄積することを示した。これにより、OsDEP1はCd含量の促進に関わることが示唆された。 今回の研究成果から、OsDEP1は、酵母とシロイヌナズナにCd耐性を与えることが示唆された。そして、Cd耐性に関わるのは主にシステインリッチ領域であるOsDEP1(170-426)が関わることが示唆できた。今後の研究方針としては、OsDEP1がCd耐性に直接関わるか、または、他のCd耐性遺伝子を発現させるために必要な因子であるか明らかにし、ファイトレメディエーション法の確立に貢献する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母を用いたスクリーニングのシステムについて、新規遺伝子の他に、既知の重金属関連遺伝子が選抜されてきている。よって、酵母のスクリーニングのシステムは、順調に進んでいると判断した。さらに、スクリーニングで見つけた新規遺伝子を酵母とシロイヌナズナに導入し、Cd耐性を示すか確認をした結果、耐性を示したことから、酵母を用いたスクリーニングは精度が高いと言える。今後、新規遺伝子の解析について、さらなる進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、酵母を用いたスクリーニングだけでなく、イネのcDNAを導入したシロイヌナズナを用いてスクリーニングする手法であるFOXハンティングシステムを作製し、より多くの新規遺伝子の解析に力を入れていく。本研究は、重金属汚染土壌の修復や、重金属低吸収農作物の育成を目標にしているが、昨年の東日本大震災・原子力発電所事故に起因する放射性物質汚染土壌に関する問題ついて、本研究の成果を活かせるかどうか検討していきたい。
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Research Products
(3 results)