2014 Fiscal Year Annual Research Report
スコットランド常識学派からドイツ観念論に到るコモン・センスの変容と啓蒙の思弁化
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12J07633
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 ふく子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドイツ観念論 / ヘーゲル / 思弁 / コモンセンス・共通感覚・常識 / スコットランド常識学派 / 哲学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コモン・センス(=常識、共通感覚)と思弁の関係性、ひいては両者のあいだで主体が果たしうる哲学的教養形成の可能性を、(1)スコットランド常識学派の影響が見られる近代ドイツの啓蒙主義、(2)その後のヘーゲルを中心とした思弁哲学、(3)現代ドイツの哲学教授法という三つの領域の体系的研究を通じて総合的に描き出すことである。本年度は上記三つの領域について以下の内容で研究を進めた。 (1)スコットランド常識学派の創始者トマス・リードのテキスト『人間精神の研究』および『人間の知的能力論』に基づいてコモン・センス概念を読み解き、ヒュームの観念論の懐疑主義的帰結に対する批判の論点と、「オリジナルな知覚」の概念を軸にした独自のコモン・センスの哲学の意義について明らかにした。また、リードの立場をより強化し、観念論的理性ではなく信念による哲学をうち立てたヤコービの著作『信念をめぐるデヴィッド・ヒューム』を読解し、観念論をニヒリズムと診断する視点の限界について指摘した。以上の成果は論文「共通感覚と共通知の哲学」にて発表された。 (2)前年度に引き続きヘーゲル哲学における「思弁的命題」の含意と意義の解明に取り組み、この研究成果を学術雑誌『思索』で発表した。そこではヘーゲルの思弁概念を、それを悟性的な形で表現する命題・叙述・言語との関係から考察し、思弁的なもの(全体・理念)の表現の限界と可能性を明らかにすることが目指された。 (3)ドレスデン工科大学哲学研究所のヨハネス・ローベック教授のもとでドイツの哲学教授法に関する在外研究をおこない、ドイツの哲学教育の実態や実践例、有効な方法論等について最新の知見を得るとともに、有意義な意見交換をおこなうことができた。ドイツの哲学教育の理念や方法をどのように今後日本の哲学や教育制度、慣習に無理なく活かすことができるかという間文化的な問題が浮き彫りになった。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)