2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体素子に対する宇宙線起因シングルイベント効果のマルチスケールシミュレーション
Project/Area Number |
12J07673
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安部 晋一郎 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 特別研究員DC2
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Keywords | 半導体デバイス / 宇宙線 / 中性子 / 陽子 / シングルイベント効果 / ソフトエラー / シミュレーション / 核反応 |
Research Abstract |
本研究の目的は、宇宙線による半導体素子のシングルイベント効果(Single-Event Effects:SEEs)に関するシミュレーションの高精度化である。SEEsとは放射線が電子機器内の半導体素子へ入射した際に起こる現象で、これにより電子機器に一時的な誤動作(ソフトエラー)が生じる。以下、平成24年度の研究で実施した三項目について成果をまとめる。 (1)各物理過程に関するモデルの高精度化 過去の共同研究で新規構築したPHITS-HyENEXSSを用いて設計ルール25nmのデバイスに関する詳細なソフトエラー解析を実施した。また異なる核反応モデルを用いて同解析を実施・比較することで、核反応モデルの生成二次粒子の放出角度・放出エネルギーの記述の精度がSER解析結果へ大きく影響を及ぼすことを明らかにした。更に核反応モデルの精度検証を行うことでソフトエラー解析において推奨される核反応モデルの組み合わせを示した。 (2)SER概算法の提案 迅速なSER概算法としては有感領域モデル(SVモデル)が一般的に用いられており、本研究でもSVモデルに着目して研究を実施した。初めにSimple-SVモデルを用いてSER解析を行いPHITS-HyENEXSSによる詳細解析結果と比較した結果、Simple-SVモデルでは収集電荷量を再現できないイベントが少なからず存在することが判明した。原因として電荷収集効率の位置依存性が考慮されていないことが考えられるため、現在はMultiple-SVモデルに基づいたSER概算手法について研究を進めている。 (3)MCU(Multi Cell Upset)に関する研究 大阪大学の共同研究グループにより実施された設計ルール65nmのデバイスへの中性子照射MCU測定実験についてPHITSを用いた解析を行った結果、HeイオンがMCU発生の主因であることを特定した。また実験において中性子入射仰角を傾けた際にMCUが増加する傾向が観測されたが、解析結果より重イオン起因MCUが増加したことが原因であることを明らかにした。この結果よりMCU解析においてはHeイオンおよび重イオン生成に関する核反応モデルの記述精度が重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ提出した交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿って研究を順調に進めており、平成24年度に実施を予定していた二つの課題について前述した研究成果が得られた。また平成25年度に実施予定だったMCUに関する研究も前倒しして実施しており、実験で得られた結果をシミュレーションにより裏付けることが出来た。 以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSER概算手法の提案に重点を置いて研究を進める計画であり、現在のところMultiple-SVモデルを用いた概算手法について研究を行っている段階にある。近年、intra-cell効果という知見に基づき、重イオン照射実験結果を用いて収集電荷効率の位置依存性を考慮するという手法が研究されている。本研究では同手法を用いた解析を行うと共に更に発展させた解析手法を提案し、PHITS-HyENEXSSによる詳細解析との比較を行うことで提案手法の精度検証を行う。また平成25年度には大阪大学の共同研究グループによるSOIデバイスへの中性子照射実験が予定されているため、実験の前段階としての予備解析や実験後の解析などを並行して進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)