2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙用集積回路の革新へ向けたグラフェン/SiC基板量産技術の確立
Project/Area Number |
12J07700
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 仁人 九州大学, 応用力学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グラフェン / SiC / 結晶成長 / シミュレーション / C凝集 |
Research Abstract |
【本研究課題の目標】 本研究課題では宇宙用集積回路が抱える高速・低消費電力化と放射線耐性強化のトレードオフを解消することを目的とし,グラフェン/炭化ケイ素(SiC)集積回路技術の基礎となるグラフェン/SiC基板量産手法の確立を目指す.具体的にはSiC表面熱分解過程におけるグラフェン成長機構を量子力学シミュレーションによって解明し,電子デバイス用途の高品質グラフェン/SiC基板を得るための熱分解プロセスを提案する. 【平成24年度研究内容の概要】 平成24年度はグラフェン成長の初期段階に対して理解を深めた. 申請者は前年度までにグラフェン成長初期過程について,SiC基板表面の熱分解とC原子の表面拡散に主眼を置いて研究を進めてきた.今年度は,基板表面を拡散するC原子が凝集し,グラフェン核が形成するまでを検討した. 【研究成果】 1.テラス上のC原子凝集過程 原子解像度で平坦なSiC表面(テラス)上のC原子凝集過程を調べたところ,テラス上の微小なグラフェン核は5員環,7員環などのトポロジカル欠陥を含む不完全な結晶構造を持つことがわかった.この5員環,7員環はグラフェン核がグラフェン・シートへ成長する過程で6員環に変形すると考えられる. 以上の結果は,核形成頻度を制御することによるグラフェン・シート内の結晶粒の拡大には,結晶粒内部の結晶構造を完全化させる作用もあるため,単に結晶粒界を低減させる以上の意義があることを示唆している。 2.ステップ近傍のC原子凝集過程 次にSiC表面上のステップ近傍におけるC原子の凝集過程を調べたところ,グラフェン核はSiC表面上のステップ構造を反映し,テラス状とは異なる構造を持ち得ることが示唆された.特に[1120]傾斜ステップとSi終端の[1100]傾斜ステップにおいてグラフェン核は主に6員環で構成されることがわかり,適切なステップを選ぶことで欠陥の導入を抑制できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究活動によってグラフェン成長の初期段階(C拡散過程~グラフェン核形成過程)に対する理論検討が完了した. また,量子力学計算プログラムの高速化(並列計算プログラムの実装)および予定していた研究成果の公開(国際会議1件,論文発表2件,国内招待講演1件,国内会議6件)を達成した. 以上の理由から、当初の計画通り研究を進展させたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究計画に従ってグラフェン成長の初期段階以降を理論検討し,成長過程全体を理解する. グラフェン成長過程に対する一連の理解に基づき,高品質グラフェンを得るための熱処理プロセスを提示し,その効果を共同研究先の実験グループ(九州大学工学府エネルギー量子専攻田中研究室)の協力の下で検証する.以上の成果を論文2件,国際会議1件,国内会議3件で公表するとともに,積極的な議論により研究の質的向上を図る.
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Research Products
(10 results)