2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の老化におけるニッチ構成タンパク質SPARCの役割に関する研究
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12J07714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 克行 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 老化 / 骨格筋 / SPARC |
Research Abstract |
加齢に伴い骨格筋では細胞外マトリクス因子SPARCの発現が低下することが知られるが、その意義は不明である。そこで骨格筋におけるSPARCの役割を調べるため、若齢マウス骨格筋でのin vivoでのsiRNAによるSPARC発現抑制実験を行った。まずin vivoにおけるsiRNAのノックダウン効率を調べたところ、siRNA導入2日後においてmRNAおよびタンパク質レベルで7O%の抑制効果が得られた。この条件下で筋の表現型を調べたところ、SPARCの発現を抑制した筋では筋線維の直径が減少する知見が得られた。この筋線維直径の減少は速筋型筋線維において顕著であり、このことは高齢者で見られる表現型と類似する。同時に筋萎縮遺伝子atrogin1のmRNA量の増加ならびにその上流に位置するトランスフォーミング増殖因子(TGF)βのシグナル増強も見られた。以上のことから、SPARCは骨格筋においてTGFβ-atrogin1シグナルを制御することで筋線維の萎縮に対し保護的な作用を持ち、加齢に伴うSPARCの発現低下は骨格筋量低下の一因となる可能性が考えられる。次に骨格筋由来前駆細胞において加齢に伴うSPARCに対する反応性低下についてその機序を解明するため、骨格筋前駆細胞培養系におけるSPARCの可視化を試みた。Alexa蛍光色素によりSPARCを標識し、ラット骨格筋由来前駆細胞に添加したところ、SPARCが細胞内へと取り込まれた。このSPARC内在化を若齢・老齢ラット由来骨格筋前駆細胞間で比較したところ、SPARCの細胞内への取り込みは加齢に伴い亢進することも判明した。以上のことから、骨格筋前駆細胞においてSPARCの内在化が加齢に伴い変化することでSPARCに対する反応性が低下する可能性が考えられた。今後、骨格筋の老化においてSPARCの内在化が関与するかどうかまたそのメカニズムについてさらに研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivoでのsiRNA導入による発現抑制実験により、当初の計画どおり、骨格筋におけるSPARCの役割を明らかにすることができた。また、SPARCが骨格筋前駆細胞内に取り込まれるという結果を得たことは予想外であるが、その取り込みが加齢に伴い変化すること、またこのSPARC内在化における変化がSPARCの加齢に伴う脂肪分化調節作用発現の消失に関与ことが示唆された。この結果もまた加齢に伴うSPARCの反応性低下機序解明にむけて当初の計画と同程度の成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSPARCの内在化の加齢性変化をターゲットとし、その分子メカニズム解明を目指す。そのためにはまず、SPARC内在化に関与する分子を特定し、その中で加齢に伴い発現ならびに局在が変化し、SPARC内在化の加齢性変化の原因を明らかにする。加齢性変化を同定した際は、トランスジェニックマウスを作出しin vivoにおいてもこれらの因子が骨格筋の老化に関与するものかどうか検証する予定である。
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Research Products
(5 results)