2012 Fiscal Year Annual Research Report
宿主の生活史や行動の違いが介在した、ネジレバネの宿主選択性の進化
Project/Area Number |
12J07730
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中瀬 悠太 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ネジレバネ / 分子系統解析 / 宿主-寄生者系 |
Research Abstract |
スズメバチネジレバネの分子系統解析と記載 スズメバチは生態系の中では捕食者として重要であり、人との関わりでは強い毒と高い攻撃性のために重要な害虫として有名である。Vespa属の真社会性の大型スズメバチ類に寄生するスズメバチネジレバネを材料に分子系統解析を行い、スズメバチネジレバネとして知られていたXenos mutoni以外にもう一種いることを明らかにし、記載も行った。日本を含む東アジアからVespa属のスズメバチとそれに寄生しているネジレバネのサンプリングを行った。 そして、それらのネジレバネについてミトコンドリアのシトクロームオキシダーゼ1の塩基配列(652塩基)に基づいて系統解析を行った。さらに形態的な比較を行うことでこれまで一種として扱われてきたスズメバチネジレバネに2種含まれていることを解明した。既知種であるXenos moutoniに対し、新種をXenos oxyodontesとして記載した。X.moutoniがオオスズメバチを中心にVespa属の複数種のスズメバチを宿主として利用していたのに対し、X.oxyodontesはコガタスズメバチとキイロスズメバチへの特殊化が見られた。コガタスズメバチからはX.oxyodontesの寄生しか確認されなかった。このように2種は異なった宿主利用様式を示すことを明らかにした。 スズバチネジレバネのサンプリング 琉球諸島に分布するカリバチ類はアシナガバチからドロバチまで色彩が似ており、さらにその色彩の収斂の結果は島ごとに異なっている事が知られており、亜種として分類されている。一方ドロバチ類に寄生するネジレバネではそのような色彩変異は知られていないが、島ごとに宿主とするドロバチが変化している可能性があった。4月、6月、7月に奄美大島、徳之島、沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島において竹筒トラップの設置及び回収を行った。その結果、奄美大島と徳之島以外の島ではオオフタオビドロバチ及びそれに寄生するスズバチネジレバネのサンプリングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリバチ類寄生性ネジレバネの分子系統解析についてはスズメバチのネジレバネにおいて未記載種の発見と記載を報告するに至っており、一部当初の計画以上の進展し、一定の目的を達成したと考えている。もう一点のスズバチネジレバネの系統解析については一部地域でのサンプリングが不十分でやや遅れが見られるが、当初の計画の範囲内である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は琉球諸島のスズバチネジレバネについて未だサンプルが得られていない地域があり、その地域で重点的にサンプリングを継続すると同時に解析も並行して行い、結果のまとめ及び報告を行う予定である。
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Research Products
(3 results)