2012 Fiscal Year Annual Research Report
異種二核窒素錯体を用いた次世代を担う触媒的窒素固定法の開発
Project/Area Number |
12J07739
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 貴匡 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2012 – 2013-03-31
|
Keywords | 窒素固定 / 異種二核錯体 / 有機金属化学 / 錯体化学 |
Research Abstract |
工業的な触媒的窒素固定プロセスであるハーバー・ボッシュ法は高温高圧の過酷な反応条件を必要とするエネルギー多消費型プロセスであり、世界のエネルギー消費の数%を占めるとされる。そのため常温常圧という穏和な反応条件下で進行する代替法の開発は、持続可能な社会を実現する上で科学者が達成すべき最重要課題の一つであるといえる。申請者は、常温常圧で進行し実用化に耐え得る高活性な触媒的アンモニア生成法の開発を研究目的として、鉄及びモリブデンからなる異種二核窒素錯体を新たな触媒として分子設計し、ハーバー・ボッシュ法に取って代わる触媒的アンモニア生成法の実現を目指した。本年度行った研究の結果、分子設計した異種二核窒素錯体の合成に成功した。さらに合成した窒素錯体を用いた、光エネルギーによる窒素-窒素間3重結合切断を鍵とする窒素分子のアンモニアへの変換反応の開発に成功した。しかしアンモニアの生成量は化学量論量に留まり、当初の目標である触媒的アンモニア生成反応の開発には至らなかった。そこで反応の触媒化を目的に、本反応系におけるアンモニア生成の反応機構について詳細な検討を行った結果、反応鍵中間体であるニトリド錯体のプロトン化反応において、分子内のフェロセン部位の酸化によって誘起された対応する窒素架橋錯体生成という副反応が、アンモニア生成反応の触媒化を妨げている要因であることを明らかにした。残念ながらこの事実は本反応系において触媒的アンモニア生成反応を達成することは困難であることを示すものではあったものの、その代わりに本反応系が錯体の酸化還元反応を制御することにより、窒素分子の窒素-窒素間結合の切断及び生成反応を可逆的に進行させることができる、これまでにない特異な反応系であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において分子設計した異種二核窒素錯体の合成に成功し、さらにその錯体を用いた温和な反応条件下で進行する窒素分子の化学量論的アンモニア変換反応を達成したため。しかしながら、研究の最終目標である触媒的アンモニア生成反応開発は未だ達成できておらず、今後の課題であるといえる。
|
Research Products
(5 results)