2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J07793
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
藤崎 朋子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 零細企業 / 熟練技術 / 労働 / 理美容業 |
Research Abstract |
平成24年度に実施した計画は次の4つである。1.理美容師らを取り巻く状況の実態解明(質問紙調査)、2.資料収集、3.古典・学術理論書の精読、4.学会参加。 これまで厚生労働省や組合の既存データからは、現場の理美容店経営者および理美容師従業員の考えが見えない点が問題だった。そこで本研究は調査方法の先行研究を参考に経営者用と従業員用の調査票を作成し、組合加入率が50%の千葉県を対象として600店舗を無作為抽出し郵送調査を行った。結果60店舗93名から回答を得られ、そのうち22名から追加の面接調査に対し承諾を得ることができた。回答結果は(1)理容業と美容業、(2)経営者と従業員、(3)見習い修業年代、(4)男女に区分けし、各々の傾向と相互関係を分析した。 質問紙調査に先だち本研究は社会科学の理論を身につけるための学術書の精読(理論研究)に取り組んだ。マルクスらの古典や理論書、理美容関連古書を、ノートに記述しながら精読し、著者の思考を丁寧に追った。学術書の精読(理論研究)・に力を入れて取り組むきっかけとなったのは8月に参加した国際学会(2^<nd> ISA Forum of Sociology)である。世界の各国から集まった研究者らと話をして、自分自身の研究における学術理論書や理美容関係古書のさらなる精読の必要性を感じ、帰国後、一層深く読み込む努力を払った。 学術書の精読(理論研究)は、質問紙調査および文献調査から明らかになった理美容業の実態について、一般的理解を実現するための枠組み構築に役立った。またこれまでの文献調査では法律の区分に従って理容業と美容業は質的にも異なるとされてきたが、質問紙調査からは多く共通点があることがわかった。理容業と美容業を互いに比較の参照軸としてきたこれまでの学術研究にとって興味深い結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」には(1)理美容師らを取り巻く状況の実態解明(質問紙調査)、(2)理美容師への聞き取り調査、(3)資料収集、(4)古典・学術理論書の精読、(5)学会参加を挙げたが、(2)を除いて全て実施した。具体的に、(1)は事実把握のための質問紙調査を実施し、現在回答結果を分析している。(3)(4)は「常時行う」としたとおり現在も続行中である。 (5)の学会参加は、より一層理論研究(学術書の精読)に励まなければならないことを自覚するきっかけとなった。 学術書の精読にさらに力を入れ、(1)質問紙調査(3)理美容関係古書の分析及び現状を把握する視点を構築しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、(1)学術書の精読(理論研究)を(2)実証研究に生かし続けることを基調とする。そのうえで平成25年度は成果の執筆作業に取り組み、研究論文を学会誌に投稿する。 (1)学術書の精読(理論研究)の継続:マルクス、ウェーバー、ラスキン、モリス、旧唯物論研究会の技術論論者らの学術成果を著作物の精読により摂取する。理美容業の実態解明調査につながる思想を身につける。 (2)実証研究:質問紙調査の結果を手がかりとして理美容師に聞き取り調査を行う(質的調査)。個人自営業・家族営業・会社経営等の経営形態の別により、経営者の経営の仕方・労働者の働き方・見習い者の見習いの仕方の違いを調べ、理美容師らが自らの生きる時代をいかにとらえているかを証言によって明らかにし、論拠を固める。
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Research Products
(1 results)