2012 Fiscal Year Annual Research Report
現実的な流動則を考慮した数値計算による沈み込み帯付近の異方性構造の制約
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12J07796
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森重 学 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 沈み込み帯 / 温度構造 / 有限要素法 / 国際交流者交流 / アメリカ合衆国 / 流れ場構造 |
Research Abstract |
6月からミシガン大学(アメリカ合衆国)に滞在し、Peter E. van Keken氏のもとで有限要素法に基づく3次元沈み込み帯の数値モデルの使用方法を習得した。有限要素法は有限差分法、有限体積法と比較して細かいモデル形状を扱うことに優れている。そのモデルを用いて東北地方から北海道にかけての沈み込み帯の温度構造、特にスラブ表面の温度分布に焦点を当てた計算を行った。その結果、北海道南部、つまり日本海溝と千島海溝の接合部でスラブ表面に高温異常と低温異常が生じることが明らかになった。この高温異常は3次元熱伝導の影響、低温異常はマントルウェッジ内に生じる3次元的な流れに起因するもののようである。今後は得られた温度構造をこの地域での地殻熱流量やスラブ内地震活動と比較していく予定である。 また学会・ワークショップにも積極的に参加した。5月には国内の学会(日本地球惑星科学連合連合大会)、12月にはアメリカ合衆国での学会(AGU fall meeting)、そして翌年3月には「ふつうの海洋マントル」国際ワークショップに参加し発表、議論を行った。 東北地方から北海道にかけての沈み込み帯近傍のマントルの流れの構造に関する論文を国際誌Earth and Planetary Science Lettersに投稿、受理された。これは東北地方から北海道にかけての海溝の形状を考慮することで、この地域で観測されているマントルウェッジでの流れ、沈み込むスラブの形状を少なくとも定性的には説明可能であることを示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方から北海道にかけての沈み込み帯における流れ場についての論文を投稿、受理された。これは海溝形状が地球内部のダイナミクスに与える影響を示した重要な研究である。また新たに有限要素法を用いた3次元沈み込み帯の数値モデルを習得したことで、今後の研究の幅が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算によって得られたスラブ表面の温度分布が何故生じるのかについてまだ十分に理解できていないため、まずはそれについて説得力がある説明を考える。必要に応じて追加の計算も行う予定である。その後は得られた温度構造から地殻熱流量、スラブ内物質の相変化等を計算し、東北地方から北海道にかけての地殻熱流量やスラブ内地震活動等の観測結果との比較を行う。
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Research Products
(4 results)