2013 Fiscal Year Annual Research Report
現実的な流動則を考慮した数値計算による沈み込み帯付近の異方性構造の制約
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12J07796
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森重 学 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 沈み込み帯 / 温度構造 / 表面熱流量 / スラブ内地震活動 / 有限要素法 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
アメリカ合衆国ミシガン大学において有限要素法を用いた3次元沈み込み帯の数値計算手法を習得し、それを東北地方から北海道にかけての沈み込み帯に適用した。この地域では沈み込む太平洋プレートの形状に大きな変化が見られるため、3次元のスラブ(沈み込んだプレート)形状が沈み込み帯の温度構造に及ぼす影響の大きさを推定するには最適な場所である。数値計算を行った結果、スラブの形状が大きく変化する北海道南部の下でスラブ表面温度に高温異常・低温異常が生じることが明らかになった。高温異常は熱伝導、低温異常は熱の移流によるものである。ただ得られたスラブ内の温度異常はそれ程大きくはなく(最大50度程度)、スラブ内の地震分布に及ぼす影響は限定的であると考えられる。一方3次元スラブ形状が表面熱流量に与える影響は小さいことが明らかになった。このことから、北海道南部で見られる異常なスラブ内地震活動分布、低熱流量を説明するためにはマントルウェッジ内の3次元的な流れによる効果のみでは不十分であると言える。今後は北海道南部における地殻の変形に焦点を当て、その表面熱流量やスラブ内地震活動分布へ及ぼす影響を見積もる予定である。 これらの結果に基づいた発表を平成25年6月にアメリカ合衆国で開かれたゴードン会議、10月に日本で開かれた日本地震学会秋季大会、12月にアメリカ合衆国で開かれたAmerican Geophysical Union, fall meetingにて行った。また論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに習得した数値計算手法を用いて東北地方から北海道にかけての3次元温度構造を求めることに成功し、論文投稿の段階まで来ている。沈み込み帯の3次元温度構造に対する新たな知見が得られており、沈み込み帯の更なる理解に一定の貢献をしていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
地質学や地震学の研究により、北海道南部では前弧地殻の沈み込みが起きている可能性が指摘されている。もしこれが本当に起きているとすれば、沈み込んだ地殻は地表面やその下の太平洋プレートを効率的に冷やすことが期待される。そこで今後は北海道南部で沈み込んだ前弧地殻が温度構造に及ぼす影響を定量的に見積もることを予定している。そのためには北海道付近のテクトニクスをより詳細に理解する必要があるため、地質学者等と積極的に議論を行っていく。
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Research Products
(3 results)