2012 Fiscal Year Annual Research Report
がん抑制遺伝子p53を標的とする抗腫瘍性物質の深海性海産無脊椎動物からの探索
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12J07872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
人羅 勇気 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | p53 / 深海性海産無脊椎動物 |
Research Abstract |
がん抑制遺伝子であるp53は、細胞外ストレスや遺伝子変異に応答し、細胞周期の停止やアポトーシスの誘導を引き起こす。多くのがん細胞においてp53の機能は失われており、そのため細胞のがん化が促進される。このような背景からp53の基応を回復、あるいはp53様の機能を活性化する化合物はがん化学治療薬として期待されている。 海産無脊椎動物は様々な生理活性を示す二次代謝産物を含有しており、創薬におけるシードとして期待されている。特に、深海性海産無脊椎動物は、これまでに研究されてきた浅海域の海洋生物とは異なる二次代謝産物を含有すると考えられており、新たな生理活性化合物の探索源として期待されている。 本研究では、深海性海産無脊椎動物からのp53を標的とする生理活性化合物の探索を目的とした。まず、当研究室所蔵の深海性海産無脊椎動物抽出エキスライブラリーを用いてp53を標的とする化合物のスクリーニングをおこなった。活性評価の指標としてp53の表現型の異なる三種類のがん細胞に対する細胞毒性試験をおこなった。p53野生型であるHCT116(p53+/+)、p53を欠損したHCT116(p53-/-)細胞、またp53変異型であるA431細胞を培養し、細胞毒性試験に用いた。スクリーニングの結果、ある深海性カイメンの抽出エキスにおいて、HCTI16細胞選択的に強力な細胞毒性を示すことが確認された。カイメンサンプルを抽出し、LCMSを用いて含有成分の成分分析をおこなった結果、活性化合物はこれまでに報告例のない新規化合物である可能性が示唆された。そのため、サンプルを大量抽出し、各種カラムクロマトグラフィー、およびHPLCを用いて目的化合物の単離精製をおこなった。得られた化合物をESIMSおよびNMRによって解析し、平面構造の決定を達成した。現在絶対配置も含めた構造決定をおこなっている。 本化合物の構造決定が達成されると、有機合成による化合物の供給が可能となり、p53の機能との関係性や、化合物の生理活性機序の解析が可能となり、創薬におけるシードとしての利用へと発展していく可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に想定していた通り、p53の表現型の異なる三種類のがん細胞を用いたアッセイを立ち上げることができた。また、目的とする活性を有している可能性のある化合物を検出することができ、構造解析もほぼ順調に進んでいる。しかし、p53の標的遺伝子を用いたレポーターアッセイの構築はおこなうことが出来ていない点は、当初の予定よりもやや遅れていると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在解析中である化合物に関しては、構造決定を達成した後に生物活性の再検討をおこないたいと考えている。また、深海性海産無脊椎動物の含有成分ががん細胞中のp53遺伝子の発現に与える影響を検出するために、p53の標的遺伝子を用いたレポーターアッセイを構築し、深海性海産無脊椎動物の抽出エキスライブラリーのスクリーニングをおこないたいと考えている。
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Research Products
(1 results)