2013 Fiscal Year Annual Research Report
がん抑制遺伝子p53を標的とする抗腫瘍性物質の深海性海産無脊椎動物からの探索
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12J07872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
人羅 勇気 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海洋天然物 |
Research Abstract |
当該年度の研究では、新たな化合物スクリーニング系の確立、および化学分析を用いた効率的な活性評価系の検討をおこなった。 がん抑制遺伝子p53は、正常細胞において、細胞障害あるいは遺伝的障害を受けた場合活性化し、細胞周期の停止ならびにアポトーシスへの誘導を引き起こすことが知られている。本研究では、p53様の機構で細胞周期の停止を停止させる化合物を検出するスクリーニング系を構築した。具体的には、生細胞の細胞周期を蛍光プローブにより可視化することのできるがん細胞を準備し、タイムラプスイメージングによる細胞周期の経時的変化を追うことで細胞周期を停止させる活性化合物の検出を試みた。海産動物の抽出エキスライブラリ約500サンプルをスクリーニングし、顕著な細胞周期停止活性を示したサンプルを選抜した。また、抽出液より活性化合物の単離と構造決定を達成した。単離した海洋天然物を用いて活性の再評価をおこなったところ、細胞周期を分裂期で停止させることが判明した。 また、海産動物の粗抽出液は複数の生理活性物質の混合液であるため、目的の活性を有した化合物が存在していてもその他の化合物による影響で活性を検出できていない可能性が考えられる。そこで、粗抽出液を化学的処理を施し化学的物性の類似した化合物ごとに分類し、生物試験に供する手法を試みた。その結果、粗抽出液の状態では確認されなかった活性を検出することに成功した。 今回確立した新しいスクリーニング系と生物試験前の分画システムを組み合わせることにより、今後より効率的に目的の活性化合物を発見することが可能になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞周期を可視化する蛍光プローブを導入したがん細胞を用いて細胞周期の停止を誘導する海洋天然物の探索をおこなう新たなスクリーニング系を確立することに成功した。また、構築したスクリーニング系を用いて細胞周期を停止させる海洋天然物の単離および構造決定も達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
p53は正常細胞において細胞障害または遺伝子変異がおきると細胞周期の停止ならびにアポトーシスの誘導を引き起こす。今回確立した細胞周期の停止を誘導する活性物質の探索をさらに進展させることで、p53の機能回復あるいはp53用のがん抑制作用を示す化合物の発見へとつながる可能性がある。 海洋無脊椎動物の粗抽出液には複数の生理活性物質が混在しているため、個々の化合物の真の活性を検出することは困難である。そこで、機器分析によりあらかじめ化学的物性の類似した化合物に分画した状態で本研究にて確立したスクリーニングをおこなうことでより効率的に目的とする活性物質の検出が可能になると考えている。
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Research Products
(4 results)