2013 Fiscal Year Annual Research Report
表面・界面の化学現象と多孔体構造変化の連成現象のマルチスケールシミュレータの開発
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12J07877
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中尾 和英 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 特別研究員(DC1)
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Keywords | SOFC / 分子動力学 / 密度汎関数理論 / シンタリング / 表面エネルギー / 表面拡散係数 |
Research Abstract |
本年度は、分子動力学計算及び第一原理計算を用いた表面・界面の化学現象の解明を行った。固体酸化物形燃料電池(SOFC)燃料極にはニッケルを用いたサーメットの多孔体が主に使用されているが、SOFCの高い動作温度により生じるニッケルのシンタリングによる劣化が長期的な寿命には問題となっている。また、このシンタリング劣化はサーメットに使用される酸化物材料、使用する燃料や燃料に含まれる不純物などにより挙動が変化することが知られているため、原子スケールでのシンタリングへの影響の解析が重要となる。本年度は、前年度までの成果においてニッケルのシンタリングが表面拡散によって支配されていることを特定したため、不純物種が表面拡散及び表面エネルギーに与える影響についての解析を分子動力学法・第一原理計算を用いて行った。表面エネルギーへの表面吸着種の影響は吸着エネルギーの被覆率依存性を通じて計算し、水素のNi(111)面及び(100)面への吸着エネルギーについて計算したところ、水素はNi(111)面及びNi(100)面の表面エネルギーへは影響を与えないことが分かった。次に、表面拡散への水素の影響について分子動力学法による拡散係数の算出と第一原理計算によるアドアトム形成エネルギーの計算を通じて解析したところ、キンクサイトからのアドアトム形成の際の障壁と表面上におけるアドアトムと不純物が結合した複合体の形成エネルギーの二っのパラメータにより、不純物の表面拡散への影響を求めることができることが分かった。これらの成果から、他の不純物に関しても同様の計算を行い、表面エネルギー及び表面拡散係数への影響を解析することで、SOFC動作条件下に近いNiシンタリングに関するパラメータを得ることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、メソスケールでの構造発展シミュレーションの実行をすでに行っている予定であったが、現在はシミュレーションに用いる不純物などの影響を考慮したパラメータとして、水素燃料以外の影響を求めている段階であり、実際にメソスケールでの構造発展シミュレーションの実行までには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、水素以外の表面吸着種がNiの表面拡散へ与える影響を、第一原理計算を用いて求める必要がある。特に、表面アドアトムの形成の障壁や形成エネルギーへの影響を求めることで、表面拡散への影響を求める必要がある。また、このような不純物が多孔構造の構造変化へ与える影響を確認するために、Phase-Fieldシミュレーションのパラメータに不純物による表面拡散の変化を考慮したものを用いた多孔構造変化のメソスケールシミュレーションを行う必要がある。
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Research Products
(10 results)