2012 Fiscal Year Annual Research Report
流域内農業水路群の動物群集における種多様性保全の枠組みの構築
Project/Area Number |
12J07896
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大平 充 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 農業水路 / 水生無脊椎動物 / 魚類 / 種多様性 / 接続性 / 階層スケール |
Research Abstract |
河川灌瀧により形成される水田水域の農業水路において、河川から取水し、そして河川へ排水するまでを農業水路の一つの生息地の単位とし、流域内の農業水路群スケール、農業水路内スケール、瀬や淵そして異なる河床材料などにより構成される短い水路区間(リーチ)スケールといった3つのスケールにおいて水生無脊椎動物や魚類の種多様性形成に影響する要因に関する調査・分析を行った。 水生無脊椎動物群集に関する研究では、農業水路群スケールにおいては他の農業水路間との距離といった農業水路間の接続性が、農業水路内スケールにおいては河川からの距離といった河川との接続性が、そしてリーチスケールでは河床材料などの微環境によっては種組成の差異が検出されないといった結果が得られた。以上のことは局所的な物理化学的な環境より、他の生息場からの移入のような個体の移動・分散といった要因が農業水路における種多様性形成に重要である可能性を示唆している。また、このことは、農業水路間や河川との位置的関係を考慮したゾーニングが保全・管理の計画や実践において重要である可能性を示唆するものとなった。このような生息場間での接続性に関する研究はこれまで少なく、既存の水路改修における多自然型工法の技術や、水路整備における土水路の維持管理方策に関する研究に関する知見の併せて、これらの位置的条件を考慮することの重要性を示した点で重要な知見となると考えられる。以上の内容は学位論文「農業水路における底生無脊椎動物の種多様性に関する研究」として提出した。また、リーチスケールにおける研究は「農業水路における瀬一淵および微生息場と水生昆虫群集の多様性の構成」として環境情報科学論文集に掲載された。また農業水路群スケール、農業水路内スケールの内容の論文執筆を進めており、今年度中に投稿予定である。水田水域における生物群集の形成機構や農業生産のために重要な栄養塩供給や害虫防除といった生態系サービスの持続的利用のための生態系管理に関する既往の研究の整理と今後の課題の整理を同時に行っており、これについても今年度中に投稿予定としている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である、農業水路における生息場の階層性に合わせて種多様性形成およびそれに影響を及ぼす要因の研究については、一定の傾向を得ることができた。今後のこの傾向の検証や成果発表の基となる結果が得られており、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果をもとに、そのメカニズムの検証のための調査・分析、そして得られた傾向に関する論文執筆を進める。とくに論文執筆について積極的に行うこと、また関連する研究者との議論を通じて今後のさらなる展開についての検討していくことにより研究の発展性を高めることを精力的に行うこととする。
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Research Products
(4 results)