2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J07934
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中尾 麻伊香 慶應義塾大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 放射線被曝 / 原爆調査 / ABCC / ラジウム温泉 / 広島 / 福島 / 科学言説 / 科学コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究は、原爆投下以降、放射線の人体への影響がどのように知られていったのか、占領期を中心に放射線障害に関する言説の生成と流通の過程を解明することを目的とする。本年度は以下のように研究を進めた。 1. 昨年度より行っていた放射線医学の黎明期におけるその受容に関して、大正期のラジウム温泉の流行に注目した研究成果を、日本科学史学会の年会で発表し、学会誌へ論文投稿した。この論文は、大正期において医師たちが放射線の効能を積極的に説いたことと、それが人々にどのように受容されたかを検討したもので、放射能をめぐるコミュニケーションの一つの具体例を示すことができた。 2. 科学コミュニケーションの歴史的な事例として、日本の物理学者たちが科学研究の成果をどのように一般に語ったかを検討し、マンチェスターで開催された国際科学技術医学史会議で報告した。科学知識をめぐる専門家と一般市民の関係についての考察を深め、この分野の研究者との交流を深めた。また、共同研究にも着手することとなった。 3. 原爆調査の歴史については、広島を訪れ、原爆関連アーカイブの見学、及び資料調査を行った。なかでも広島における医師会の活動に着目して調査を進めた。この内容については、次年度の日本科学史学会のシンポジウムで報告予定である。 4. 放射線被曝が人々の生活にどのような影響を与えているかに関して、福島とマーシャル諸島でフィールドワークを行った。インタビューを行った他、被曝者の健康相談に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全く計画通りではないが、研究は進展しており、その成果も順調に出せている。とくに、黎明期の放射線医学と大衆文化におけるその受容について、論文を発表することができた。また、各地の原爆資料関連のアーキビストとの交流を進め、重要な資料を検討することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き調査を進め、これまでの研究で得られた成果に関して論文、著書にまとめることに力を注ぐ。
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