2012 Fiscal Year Annual Research Report
バイオプロセスにより合成されるポリエステルの分子量制御法の開発
Project/Area Number |
12J07940
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
百武 真奈美 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 微生物合成 / 環境材料 / バイオポリマー / PHA重合酵素 / 分子量 |
Research Abstract |
本研究ではバイオプロセスにより合成されるポリエステル(ポリヒドロキシアルカン酸;PHA)の分子量制御法の開発を目指しており、現在は申請者らが発見したPHA重合酵素のみが示す特異なPHA分子量変化に関し知見の獲得を行っている。この分子量変化は他の多くの重合酵素においては確認されておらず、得られた知見を応用しPHAの分子量制御を行うことを考えている。分子量はPHAを含む高分子材料の物性に影響するため、一律な物性を有する材料の安定な供給にはこれを制御できるようになることが望ましい。 本年度はまず、この分子量変化について「分解能発現を誘発する因子の特定」を試みた。これまでの結果から本酵素によるこの特異なPHA分子量変化は、酵素がポリマー鎖を分解するために引き起こされていると考察している。すなわち本酵素はポリエステル重合能と分解能を有しており、通常は重合能を優先して発現しているが何らかの条件が満たされると分解能を示すようになると考えられる。 本年度における研究の結果から、この分子量変化に代謝生産物が関与することが示唆された。またこの物質の濃度と重合酵素活性の大小に依存して分子量低下の度合いが変化することを確認し、分解能発現はこの二つの因子により左右されていると考察している。 また本年度は、微生物細胞膜の物質選択の影響を排除し本現象について知見を獲得できる「細胞外実験系の構築」も試みた。しかしながら精製酵素を用いた実験系では、PHAの分子量低下を確認することができなかった。一方、細胞膜破砕により獲得した重合酵素とPHAを用いて構築した無細胞系では、条件を整えることにより分子量低下を誘発できることを確認した。今後この系を用いて細胞膜の影響を排除した評価を行うことを考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り分解能発現を誘発する因子の特定に成功した。また、細胞外実験系における検証は出来なかったものの当初の目的に適う他の手法を見出していることから、当初の計画と比較して順調に進展していると評価している。 今後の推進方策としては、本年度に構築した無細胞系を用いて本分子量低下について更なる知見の獲得を試みる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した分子量低下反応は他の重合酵素では報告されていない特異な現象であるため、そのキャラクタリゼーションは学術的にも重要な知見となると考えている。 また、本反応に関与する酵素部位の特定を試みる。特定した部位によっては分子量低下を制御できるようになる可能性があり、最終年度にこれらの知見を統括しPHAの分子量制御を試みる予定である。
|
Research Products
(3 results)