2012 Fiscal Year Annual Research Report
有界関数の空間におけるナヴィエ・ストークス方程式の解析
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12J08019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 健 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナヴィエ・ストークス / 解析半群 / 有界関数空間 |
Research Abstract |
偏微分方程式の研究において有界関数空間上での数学理論を構築することは極めて重要である.本研究の目的は大気や水等に代表される非圧縮性粘性流体の運動を記述する偏微分方程式として知られるナヴィエ・ストークス方程式について,有界関数の空間での初期値問題の可解性を示すことである.ナヴィエ・ストークス方程式については既に可積分空間上で数多くの研究があるが,解の正則性の立場から重要と考えられる有界関数空間上で局所解の存在定理は領域が非自明な境界を持つ場合には未知である.そこで研究者は2年間の研究期間中この局所解の存在定理を得ることを研究目的として定めた.有界関数空間上では線形化方程式の解の評価であっても未知であったため,一年目は線形化方程式の解作用素の評価に取り組み,二年目に非線形問題に取り組むよう研究計画を立て研究を進めた. 一年目は線形化方程式の解作用素であるストークス半群の有界関数空間上での解析性を示すことを目的とし,研究は大きく進展した.ストークス半群の有界関数空間上での解析性については有界領域上では既に解決に成功していたが,これを外部領域上にさらに拡張することに成功した.この結果は論文として纏め査読付き学術雑誌へと投稿した. 上記の手法は爆発法と呼ばれる背理法による解のアプリオリ評価を行ったものであるが,直接証明にも成功した.先の問題はこれまで増田・ステワルト両氏による楕円型作用素の議論を適用することが困難であったが,背理法での証明から鍵になる圧力項の評価を見い出し増田・ステワルト両氏の手法をレゾルベントストークス方程式へと拡張した.この直接証明の系として有界関数空間上での解析半群の角度がπ/2になることを示した.また背理法ではディリクレ境界条件のみを扱っていたが,Robin型の境界条件に結果を拡張した.この結果についても論文として纏め,査読付き学術雑誌へと投稿した. 上記の成果により計画一年目の後半には当初の予定よりも早く二年目の研究課題に取り組み始めた.非線形問題では対応する積分方程式を解く際の線形作用素のアプリオリ評価を導出することが鍵であるが,研究者はこの評価に対し再び爆発法による証明を与え,有界領域の場合に有界関数空間上での局所解の存在定理を証明した.また同時に爆発時刻近くでの解の最大値の下からの評価を導き,爆発の早さが境界の形状によらずタイプ1爆発よりも早いことを示した.これについては現在論文として成果を纏めている.また先の線形作用素の評価の為にソロニコフ氏による半空間上のストークス流の一意性定理を時刻ゼロで速度場が非有界である場合に拡張した.この結果は2012年のAIMS会議の講究録に掲載予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している.先の研究実績の概要にあるように二年目に研究予定である非線形問題について計画一年目の後半から取り組み,有界領域の場合に局所解の存在定理を証明した.また解析半群の角度やRobin型の境界条件といった問題は当初は取り組む計画ではなかったが,直接法による証明に成功しこれらの問題も解決することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画二年目ではナヴィエ・ストークス方程式の局所解の存在定理を有界関数空間上で証明し論文として纏めることであるが,このうち有界領域の場合については既に証明が完了している.今後の研究計画は有界領域の場合の結果を論文として纏め研究成果を発表することである.また外部領域の場合についても局所解の存在定理について取り組む予定である.
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Research Products
(16 results)