2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J08031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 喬吾 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物物理 |
Research Abstract |
本年度は主に、研究指導委託先の京都大学ウィルス研究所において、血球多分化能細胞HL-60と培養神経幹細胞の分化現象の実験・理論研究を進めた。 微細加工技術を用いてPDMSを素材としたマイクロウェルを作製することで、浮遊細胞であるHL-60の蛍光・発光観察を24時間以上の長時間に渡って可能にする系を確立した。同時に、電気パルスによる穿孔法とflow cytometry を組み合わせることで、HL-60の目的遺伝子を改変した細胞を安定して作成する条件を見つけ、分化の程度をリアルタイムで観察するための細胞、細胞間相互作用の強弱を操作できる細胞株などを樹立した。これらの実験系構築により、幹細胞未分化の指標の一つと考えられている転写因子Heslの発現ダイナミクスを、細胞が孤立している環境・多数の細胞が相互作用している環境それぞれにおいて定量することに成功した。特にHeslの発現は、マウスの神経幹細胞などにおいて時間的に振動していることが知られているが、ヒトの血球細胞であるHL-60においてはこれまで知られていた振動周期より長い波形パターンが得られるなどの成果があった。 平行して、培養神経幹細胞に関する分化の実験について、細胞間相互作用と振動の関わる分化モデルの理論的研究に携わると同時に、より定量的なモデルとの比較のために必要な神経幹細胞の実験系の構築を進めた。 また、F1-ATPaseのエネルギー論に関する統計物理基礎論に関わる理論的研究も行い、成果を収めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
血球細胞HL-60に関する遺伝子改変・長時間観察といった基礎的実験系を確立し、目的の測定データを多く得られた。さらに、多分化能を維持している培養細胞系として、HL-60とは全く違った性質を持つ培養神経幹細胞についての実験も進められ、今後の理論モデル的理解を進めるうえで、普遍的な性質や細胞種に依存した性質を区別することができるようになり、研究の幅に広がりができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き血球多分化能細胞、培養神経幹細胞の実験を進め、分化現象におけるミクロな細胞間相互作用がマクロな運命決定に結び付く現象をとらえた、基礎的モデルの構築を目指す。
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Research Products
(10 results)